人材開発支援助成金のコースの違い|7コースを比較表で整理、研修の種類から「どのコースか」を判断する

人材開発支援助成金は、会社が社員に職務に関連した研修を受けさせたときに、研修の経費や研修中の賃金の一部を国が助成する制度です。7つのコースがあり、研修の目的や内容、受ける社員によって、使うコースが変わります。同じ研修でも、どのコースで申請するかによって助成率が違います。

2026年度は、4月8日、5月14日、8月3日の3回、制度が改正されました。新しい事業を始めるための研修を対象にした事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。この記事では、厚生労働省の2026年8月3日版のパンフレットをもとに、7コースの違いを比較表で整理し、研修の種類からどのコースで申請するかを判断する方法を紹介します。

社内で新規事業を立ち上げる研修の費用と進め方は、資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て

この記事の結論

  1. 人材開発支援助成金は7コース。中小企業の研修でよく使うのは、人材育成支援、人への投資促進、事業展開等リスキリング支援の3つ
  2. どのコースかは、研修の目的(今の仕事か、新しい事業か)、内容(高度デジタル・成長分野か)、受ける社員(正社員か、有期か、45歳以上か)で決まる
  3. 中小企業の経費助成率は、人材育成支援コースの正社員向けの研修で45%、事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練で75%
  4. 2026年8月3日以降に出す計画では、職務に間接的にしか関係しない研修や、職種を問わない共通の研修は、DX・GXに関する研修でも事業展開等リスキリング支援コースの対象外
  5. 同じ研修・経費・賃金について、複数の助成金を同時に受けることはできない

この記事の目次

  1. 人材開発支援助成金とは:7つのコース
  2. 4コースの比較表:助成率と賃金助成(2026年8月3日版)
  3. 研修の種類から、どのコースかを判断する
  4. 2026年度の改正:4月・5月・8月
  5. 時限措置:事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末まで
  6. コースの併用:できること・できないこと
  7. 申請の流れ(全コース共通)
  8. 新規事業の研修で使う場合
  9. Q&A

目次

人材開発支援助成金とは:7つのコース

厚生労働省は、人材開発支援助成金を次のように説明しています。

事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度

7つのコースは次のとおりです。

コース主な対象
人材育成支援コース職務に関連した知識・技能を身につける訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付きの訓練、非正規の社員の正社員化を目指す訓練
教育訓練休暇等付与コース有給の教育訓練休暇の制度を導入し、社員がその休暇を取って訓練を受けた場合
人への投資促進コースデジタル人材・高度人材を育てる訓練、社員が自発的に受ける訓練、定額制(サブスクリプション型)の訓練など
事業展開等リスキリング支援コース新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新しい分野で必要になる知識・技能を身につける訓練
建設労働者認定訓練コース建設業の認定訓練
建設労働者技能実習コース建設業の技能実習
障害者職業能力開発コース障害者の職業能力開発

建設業の2コースと障害者職業能力開発コースは、対象が限られています。この記事では、一般の中小企業がよく使う4コースを中心に比べます。


4コースの比較表:助成率と賃金助成(2026年8月3日版)

厚生労働省の「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」(2026年8月3日以降に提出された計画届が対象)の比較表から、中小企業の助成率をまとめます。括弧内は中小企業以外の会社です。

コース・メニュー研修の形賃金助成(1人1時間)経費助成率
人材育成支援:人材育成訓練OFF-JT800円(400円)、賃金要件等を満たすと1,000円(500円)正社員45%(30%)、要件で60%(45%)。非正規70%、要件で85%
人材育成支援:認定実習併用職業訓練OFF-JT+OJTOFF-JTは同上。OJTは1人20万円(11万円)、要件で25万円(14万円)45%(30%)、要件で60%(45%)
人材育成支援:有期実習型訓練OFF-JT+OJTOFF-JT 800円、要件で1,000円。OJTは1人10万円(9万円)、要件で13万円(12万円)75%、正社員化で100%
人材育成支援:中高年齢者実習型訓練OFF-JT+OJTOFF-JT 800円、要件で1,000円。OJTは1人10万円(9万円)、要件で13万円(12万円)60%(45%)、要件で75%(60%)
教育訓練休暇等付与休暇制度なし制度導入で30万円、要件で36万円
人への投資促進:高度デジタル人材訓練OFF-JT1,000円(500円)75%(60%)
人への投資促進:成長分野等人材訓練OFF-JT1,000円75%
人への投資促進:定額制訓練サブスクリプション型なし60%(45%)、要件で75%(60%)
人への投資促進:自発的職業能力開発訓練社員が自発的に受けるなし45%、要件で60%
事業展開等リスキリング支援OFF-JT1,000円(500円)75%(60%)。設備投資加算あり

「賃金要件等」は、研修を終えたあとに賃金を5%以上上げる、または資格等の手当で3%以上上げる、といった要件です。

事業展開等リスキリング支援コースには、1人1訓練あたりの経費の上限があります。中小企業の場合、研修の時間が10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円です。eラーニングや通信制だけの研修は15万円です。助成率が75%でも、受講料が高い研修では、先にこの上限で助成額が決まります。


研修の種類から、どのコースかを判断する

パンフレットの判断の流れをもとに、研修の種類とコースの対応を表にします。

こんな研修なら使うコース・メニュー
会社の業務命令で、職務に直接関連する研修を10時間以上受けさせる人材育成支援コース(人材育成訓練)
新しい事業を始める・事業を転換するために、新しい分野の知識・技能を身につけさせる事業展開等リスキリング支援コース
高度なデジタル技術や成長分野の研修を受けさせる人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練)
定額制(サブスクリプション型)の研修サービスを使う人への投資促進コース(定額制訓練)
社員が自分で選んで受ける研修の費用を会社が負担する人への投資促進コース(自発的職業能力開発訓練)
有期の社員を、OJTとOFF-JTで正社員に育てる人材育成支援コース(有期実習型訓練)
45歳以上の社員に、OJTとOFF-JTで実践的なスキルを身につけさせる人材育成支援コース(中高年齢者実習型訓練)
有給の教育訓練休暇の制度をつくり、社員がその休暇で研修を受ける教育訓練休暇等付与コース

計画届は、研修を始める日の6か月前から1か月前までに出します。研修を始めてからでは申請できません。

社員に新しい事業を立ち上げさせるための研修は、事業展開等リスキリング支援コースが基本です。新しい事業が「事業展開」に当たるか、研修の内容が対象になるかの判断は、次の記事で詳しく書いています。

→ 事業展開等リスキリング支援コース|対象になる研修・ならない研修について
→ 事業展開等リスキリング支援コース|事業展開等実施計画(様式第1-3号)の書き方


2026年度の改正:4月・5月・8月

日付改正の内容
2026年4月8日人材育成支援コースに中高年齢者実習型訓練を新設。全コース共通の変更
2026年5月14日支給要領を改正。8月3日以降に出す計画でも、条件によってはこの版が適用される
2026年8月3日事業展開等リスキリング支援コースで、eラーニングの回数の制限、対象外になる研修の明確化

受講料の価格設定:助成金を使う会社だけ受講料が高い場合、差額は対象外

同じ内容の研修なのに、助成金を使うかどうかだけで受講料に差がある場合、その差額は助成の対象になりません。事業展開等リスキリング支援コースのパンフレットは、助成金を申請する会社の受講料が30万円、申請しない会社が10万円なら、差額の20万円は対象外になる例を挙げています。

8月3日の改正:事業展開等リスキリング支援コースの対象外の研修

2026年8月3日以降に出す計画では、次の研修が、DX・GXに関する研修であっても対象外になりました。

職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの(職務に直接関連しない訓練等)

職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの(例)接遇・マナー講習等

厚生労働省のリーフレットは、営業担当者が生成AIを使って商品提案書の構成や文章をつくる研修は対象、汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ研修は対象外、という例を挙げています。

eラーニングは、1人の社員につき1年度に3回までの受講のうち、8月3日以降の計画届にもとづくものは1年度1回までになりました。研修機関との契約や申込みが8月2日以前なら、従来の扱いになる経過措置があります。

厚生労働省の資料は、事業展開等リスキリング支援コースの対象外になった研修を、別のコースで申請できるとは書いていません。人材育成支援コースも、職務に直接関連する研修であることが条件です。職務に間接的にしか関係しない研修や、職種を問わない共通の研修は、ほかのコースでも対象にならない可能性があります。申請する前に、労働局に確認してください。


時限措置:事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末まで

厚生労働省の比較表は、事業展開等リスキリング支援コースに「令和8年度末までの時限措置」と注記しています。同コースのパンフレットも、「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」と書いています。令和8年度末は2027年3月末です。

令和9年度(2027年度)の厚生労働省の概算要求では、人材開発支援助成金の要求額は602億円(2026年度の当初予算は539億円)でした。概算要求の資料では、コースが「一般訓練」「特定訓練」「団体訓練」「休暇制度導入コース」などの区分で示されていて、「事業展開等リスキリング支援コース」という名前は見出しにありません。「事業展開に資する訓練の場合」の設備投資加算は残っています。これは予算を要求している段階の資料で、2027年度の制度が決まったわけではありません。

事業展開等リスキリング支援コースを使う予定がある会社は、2026年度中に計画届を出せるかを確かめてください。研修を始める日から逆算した申請の期限は、次の記事で整理しています。

→ 事業展開等リスキリング支援コースの逆算スケジュール|今から間に合う研修

研修を使って社員に新規事業を担当させる場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て


コースの併用:できること・できないこと

事業展開等リスキリング支援コースのパンフレットは、次のように書いています。

同一の事由(同一の訓練受講、経費、賃金等)に係る助成制度を複数利用する場合、併給できない場合があります。

雇用関係の助成金に共通する支給要領も、同じ会社の同じ行為や、同じ経費・賃金について、二つ以上の助成金を同時に支給しないと定めています。

組み合わせ扱い
同じ研修を、二つのコースで申請するできない
別の研修を、それぞれ別のコースで申請する研修が別なら、それぞれの要件を満たせば申請できる(コースごとの受講回数などの上限あり)
人材開発支援助成金と、ほかの助成金(キャリアアップ助成金など)で、同じ経費・賃金を申請するできない

人材育成支援コースは会社の業務命令で受ける研修、教育訓練休暇等付与コースは社員が自発的に受ける研修が要件です。2024年の厚生労働省のQ&Aは、同じ研修で両方を受けることは原則としてできない、としています。組み合わせが複雑な場合は、申請する前に労働局に確認してください。


申請の流れ(全コース共通)

  1. 職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画をつくって社員に知らせる
  2. 研修を始める日の6か月前から1か月前までに、職業訓練実施計画届を労働局に出す
  3. 計画どおりに研修を行う
  4. 研修が終わったあと、決められた期限までに支給申請をする

職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画は、有期実習型訓練を除き、計画届を出すまでに済ませておく必要があります。


新規事業の研修で使う場合

社員に新規事業を立ち上げさせる研修は、事業展開等リスキリング支援コースで申請するのが基本です。研修が対象になるかどうかの判断と、審査で指摘されやすい点は、次の記事にまとめています。

→ 事業展開等リスキリング支援コース|不支給になるケースと審査で指摘される点

新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会
新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。

進め方は次の順番です。

  • アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
  • 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
  • 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
  • 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
  • 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す

複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。

研修のあとに残るのは、受講者が自社で立ち上げた事業と、その事業計画です。

→ 新価値創造プログラムについて詳しく見る

研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て


Q&A

人材開発支援助成金は、どのコースを選べばよいですか

研修の目的、内容、受ける社員で決まります。職務に直接関連する研修なら人材育成支援コース、新しい事業のための研修なら事業展開等リスキリング支援コース、高度なデジタル技術の研修や定額制・自発的な研修なら人への投資促進コースが基本です。

中小企業の助成率はどのくらいですか

2026年8月3日版のパンフレットでは、人材育成支援コースの正社員向けの研修が45%(賃金要件等を満たすと60%)、事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練が75%です。事業展開等リスキリング支援コースには、研修の時間に応じた1人あたりの上限(30万円〜50万円)があります。

2026年度の改正点は何ですか

4月8日に人材育成支援コースの中高年齢者実習型訓練が新設され、5月14日に受講料の価格設定の扱いが変わりました。8月3日からは、事業展開等リスキリング支援コースで、職務に間接的にしか関係しない研修や職種を問わない共通の研修がDX・GXに関する研修でも対象外になり、eラーニングは1年度1回までになりました。

事業展開等リスキリング支援コースはいつまでですか

厚生労働省の資料は、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置としています。令和9年度の概算要求では、コースの区分が組み直されていますが、要求の段階で、制度はまだ決まっていません。

複数のコースを併用できますか

同じ研修・経費・賃金について、複数のコースや複数の助成金を同時に受けることはできません。別の研修なら、それぞれのコースの要件を満たせば申請できます。

eラーニングは対象になりますか

対象になります。ただし事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降の計画届にもとづくeラーニングは、1人の社員につき1年度1回までです。このコースでは、eラーニングや通信制だけの研修は経費助成のみで、賃金助成はありません。


新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。

▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て

本記事は2026年10月17日時点の公開情報に基づいています。助成率や要件は改正されることがあります。申請の前に、厚生労働省の最新のパンフレットと支給要領をご確認ください。

[出典]
厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」2026年8月3日版
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731968.pdf
厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」2026年8月3日版
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf
厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について(事業展開等リスキリング支援コース)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
厚生労働省「雇用関係助成金支給要領」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001688336.pdf
厚生労働省「令和9年度概算要求の概要(人材開発関係)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001746552.pdf

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