【2026年8月改正対応】事業展開等リスキリング支援コース|不支給になるケースと審査で指摘される点

この記事の結論

  • 不支給の原因は大きく3つある。
    ①欠格事由(労働保険料未納・法令違反など15項目)
    ②書類・記録の不備
    ③按分や時間数の計算ミス
  • 一度提出した書類は、事業主の都合では差し替えられない。出す前に確認し切ることが唯一の対策
  • 令和7年度以降、審査は支給申請後に一括して行う運用になった。計画届が受け付けられても、支給が確定したわけではない
  • 出勤簿・賃金台帳・LMSログ・受講者の直筆署名など、後から揃えられない記録がある。訓練が始まる前に体制を決めておく必要がある
  • 令和8年2月、191事業所・約20億円の不正受給が発覚し、審査が厳格化された。その結果、新しい提出書類が増えている

この記事は「事業展開等リスキリング支援コース実務ガイド」の関連記事です。対象になる研修の判定基準は「対象になる研修・ならない研修の境界線」、様式第1-3号の書き方は「事業展開等実施計画の書き方」、申請の逆算スケジュールは「逆算スケジュール」をご覧ください。


この記事の目次

  1. 結論:不支給は3層構造で起きる
  2. 不支給になる15の事由
  3. 「計画届の受付」と「支給決定」は別物
  4. 審査で突き合わされる書類:10のチェックポイント
  5. 按分のルール:賃金助成と経費助成は非対称
  6. 訓練中に必要な記録と、後から揃えられないもの
  7. 賃金助成と賃金台帳を整合させる方法
  8. 実際に起きた不正受給事案と、そこから生まれた新しい書類
  9. 変更届・補正のルール:期限を過ぎたら遡れない
  10. 労働局に事前相談すべき理由
  11. よくある質問
  12. まとめ

目次

1. 結論:不支給は3つのポイントで起きる

事業展開等リスキリング支援コースの不支給は、次の3つのポイントのどこかで起きます。

ポイント内容この記事で扱う章
①欠格事由労働保険料の未納、法令違反、不正受給歴など、そもそも支給対象にならない事業主・訓練実施者の条件第2章
②書類・記録の不備補正に応じない、直筆署名がない、出勤簿と訓練実施記録が整合しない など第4・6・7章
③按分・時間数の計算ミス対象外時間の混入、実訓練時間数10時間割れ、対象外労働者を含めた按分漏れ第5章

対象になる研修かどうかの判定は「対象になる研修・ならない研修」で扱っています。この記事は「対象になる研修だとわかった後、審査で実際に何が見られ、何が原因で落ちるか」に絞って解説します。


2. 不支給になる15の事由

公式の詳細版パンフレットでは「不支給対象」として15項目を列挙しています。

#事由
1不正受給を行ってから5年以内に支給申請をした、または支給申請日後・支給決定日までに不正受給をした事業主等
2不正受給が発覚した場合の事業主名等の公表および返還等について承諾していない事業主等
3申請事業主の不正受給に関与した場合の名称等公表・連帯債務を承諾していない訓練実施者が行う訓練について支給申請する場合
4過去に申請事業主の不正受給に関与し、不支給措置期間が適用されている訓練実施者が実施した訓練について支給申請する場合
5支給申請をした年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主等
6支給申請日の前日の過去1年間に労働関係法令の違反を行った事業主等
7性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主等
8暴力団関係事業所の事業主等
9事業主等または役員等が、破壊活動防止法に規定する暴力主義的破壊活動を行った・行う恐れがある団体等に属している場合
10支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主等
11訓練開始日、支給申請日、支給決定日の時点において雇用保険適用事業所でない事業所
12提出書類に関して事実と異なる記載または証明を行った事業主(軽微な誤りで労働局長が認めた場合を除く)
13提出書類に関して管轄労働局長の補正の求めに応じない事業主等
14審査に必要な書類等を求めに応じ提出・提示しない、または実地調査に協力しない等、審査に協力しない事業主等
15審査に必要な書類等を整備・保管していない事業主等(関係書類は支給決定後も5年間保存)

【出典】詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)p.7「Ⅰ-4 申請にあたっての注意事項」https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf

このうち5〜11番は、共通要領の「支給要件確認申立書」で事業主自身が申し立てる欠格事由です。労働保険料の未納・労働関係法令違反・倒産・暴力団関係などは、訓練内容がどれだけ適切でも一発でアウトになるという点で、他の不備とは性質が異なります。支給申請前に自社の状況を確認しておく価値があります。

その他、次の場合も支給されません。

  • 職業訓練実施計画届を訓練開始日から起算して6ヶ月前から1ヶ月前までの間に提出していない場合
  • 訓練計画を変更する際に、定められた期日までに変更届を提出していない場合
  • 訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請を行わない場合
  • 事業主が訓練にかかる経費を全額負担していない場合
  • 所定労働時間外や休日(振替休日は除く)に実施された時間の賃金助成
  • 実訓練時間数が10時間未満の場合(一部除く)

【出典】詳細版パンフレット p.29


3. 「計画届の受付」と「支給決定」は別物

事業展開等リスキリング支援コースでいちばん誤解されやすいのが、計画届が受け付けられることと、助成金の支給が決まることはまったく別という構造です。

令和7年度以降は、計画提出時・支給申請時の申請項目及び添付書類の削減・整理・統合に伴い、助成金の支給又は不支給の決定に係る審査は、支給申請後に一括して行うこととなりました。なお、計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません。

【出典】支給要領0603/詳細版パンフレット PDF p.41(冊子ノンブル40)

計画届の受付時に労働局がチェックするのは、記入漏れや表示の誤記、必要な添付書類が揃っているかという形式面のみです。訓練内容が本当に対象になるか、実訓練時間数が要件を満たすかといった実体審査は、訓練を実施し費用を払い終えたあとの支給申請時に行われます。

つまり、計画届が何も指摘されずに受け付けられても、それは「支給される保証」にはなりません。 訓練内容の対象性については「対象になる研修・ならない研修の境界線」を、様式の書き方については「事業展開等実施計画の書き方」を参考に、提出前の時点でできる限り詰めておくことが実務上の対策になります。

支給決定・不支給決定は、それぞれ次の通知書で伝えられます。

結果通知書
支給決定支給決定通知書(様式第23-3号)
不支給決定不支給決定通知書(様式第24-3号)
不正受給による措置不支給措置期間通知書(様式第25-3号)

【出典】支給要領1001


4. 審査で突き合わされる書類:10のチェック

支給申請時に労働局が実際に何を突き合わせるかは、支給要領0901〜0905に定められています。ここに書かれている突き合わせに耐えられれば通ります。

確認項目突き合わせる書類落ちるポイント
賃金が適正に支払われているかOFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)+賃金台帳または給与明細書の写し+出勤簿またはタイムカードの写し適正に支払われていない場合は支給要件判定を保留し、事業主に確認
対象労働者が計画届時と支給申請時で一致しているか対象労働者一覧(様式第3-1号)+賃金助成及びOJT実施助成の内訳(様式第5号)+OFF-JT実施状況報告書異なる場合は支給対象労働者とならない
対象労働者が訓練実施期間中に被保険者か雇用保険被保険者台帳+雇用契約書または労働条件通知書の写し
実訓練時間数の8割以上受講しているか職業訓練実施計画届+訓練カリキュラム+OFF-JT実施状況報告書8割未満は不支給
三者証明があるかOFF-JT実施状況報告書に訓練実施者・申請事業主・対象労働者の三者による証明。対象労働者の証明は直筆の署名であることを確認代筆・印字は不可
出勤状況が確認できるか対象労働者の出勤簿・タイムカード+部内講師の出勤簿・タイムカード「出勤状況等が確認できないものは支給対象と認めない(確認できない受講時間は算入しない)」
eラーニングの実施状況eラーニング訓練実施結果報告書(様式第8-3号)+修了証の写し+LMS情報の写し実施状況を確認できないものは支給対象労働者とならない。労働時間中に訓練が実施されていないことが疑われる場合は出勤簿の提出を求められる
通信制の実施状況通信制訓練実施結果報告書(様式第8-4号)+修了証+添削課題の写し。二者証明(対象労働者は直筆署名)
計画に基づく訓練か計画届提出時と支給申請時の受付番号、訓練コースの名称・内容が同一であること名称が違うだけでも指摘対象
経費を全て負担しているか請求書・領収書・振込通知書等+教育訓練機関等から提供された訓練費用の負担軽減に係る説明資料等返金・キックバックがないことを確認

【出典】支給要領0901〜0905

さらに共通要領は、審査の材料を次のように定めています。

提出書類のほか、事業主からの直接確認、事業所の実地調査等により確認した事項に基づいて判定する

【出典】共通要領0601イ

つまり書類だけでなく、必要に応じて事業主への直接ヒアリングや実地調査も審査の材料になります。 実地調査は事前連絡なしで行われる場合があります(第8章)。


5. 按分のルール:賃金助成と経費助成は非対称

カリキュラムに対象外の内容や、上限を超えた休憩・移動時間などが混ざったときの扱いは、賃金助成と経費助成で結論が異なります。

カリキュラムの一部に表1に掲げる内容、表2の実施方法によって行われる部分、(小休止)若しくは(開講式、閉講式及びオリエンテーション)の上限時間を超える部分又は移動時間がある場合には、当該時間は実訓練時間数に含めない(賃金助成の助成対象としない。経費助成については、按分計算はせず実訓練時間数に含めない部分を含めて助成対象とする。)。

【出典】支給要領0305イ

  • 賃金助成 → 対象外時間を除いた時間数のみで計算(時間で按分される)
  • 経費助成 → 按分しない。対象外時間を含む全体の経費が対象(ただし全体の実施目的が対象外と判断されれば経費も賃金も丸ごと対象外)

本当に按分が必要になるのは別の場面です(支給要領0505)。

  • 事業内訓練の経費助成 = (部外講師の謝金+旅費+施設設備の借上料+教材費+資格試験の受験料等+訓練コースの開発費)×(助成対象労働者数/訓練コースの総受講者数)× 助成率
    → 対象外の労働者(非被保険者・役員等)が混ざった集合研修は、この分母で必ず割られます
  • 定額制サービス = 経費 ×(支給対象労働者数/契約者数)×(訓練の実施期間の日数/契約期間の日数)× 助成率

カリキュラムに対象外パートが混ざると実訓練時間数が10時間を割り込み、訓練そのものが不支給になり得るという論点は、「対象になる研修・ならない研修の境界線」の第7章で詳しく扱っています。


6. 訓練中に必要な記録と、後から揃えられないもの

支給申請の審査で求められる記録の中には、訓練が終わってから慌てて用意しようとしても間に合わないものがあります。

記録誰が作るか後から作れるか
OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)事業主が作成し、訓練実施者・申請事業主・対象労働者の三者が証明形式上は後日でも作れるが、対象労働者の直筆署名が必要なため、退職者が出ると詰む
出勤簿またはタイムカードの写し事業主(法定帳簿)後から作れない。「原本から転記・別途作成したものは無効」
賃金台帳または給与明細書の写し事業主(法定帳簿)❌ 同上
部内講師の出勤簿・タイムカードの写し事業主❌ 忘れがち。部内講師を立てた事業内訓練で必須
eラーニングのLMS情報の写し教育訓練機関後から作れない。サービス解約後にログが消えるとアウト
修了証の写し教育訓練機関機関次第
通信制の添削課題の写し対象労働者→教育訓練機関❌ 提出前にコピーを取っておかないと不可
経費の請求書・領収書・振込通知書取引先証拠書類等の日付が支給申請書の提出日以前であること

【出典】詳細版パンフレット p.45-47/支給要領0804・0903・0905

署名は代筆できません。

対象労働者の証明は、対象労働者の直筆の署名であることを確認すること。

【出典】支給要領0903ハ(イ)

関係書類は支給決定後も5年間保存が必要です。「写真」は制度上の必須書類ではありませんが、労働局は事前連絡なしの実地調査で訓練実施日に訓練が行われているかを確認することがあります。

実務上、訓練開始前に決めておくべきこと:

  • 出勤簿・タイムカード・賃金台帳の整合性は、法定帳簿として通常どおり整備する(作り直しは「別途作成された書類」として無効)
  • LMSログは定期的にエクスポートしておく(サービス解約後は取得できない)
  • 通信制の添削課題は提出前に必ずコピーを取る
  • 訓練期間中に所定労働時間を変更するなら、訓練開始前に労働条件通知書等で明示・周知しておく(第7章)

7. 賃金助成と賃金台帳を整合させる方法

7-1. 計算式

賃金助成額 = 賃金助成額単価 × 助成対象労働者が受講した OFF-JT 賃金助成対象時間数
             (所定労働時間内に実施された訓練時間数に限る)
企業規模賃金助成額(1人1コース1時間あたり)
中小企業1,000円
大企業500円

賃金助成の時間数の限度は、1人あたり一の職業訓練実施計画につき1,200時間(専門実践教育訓練の指定講座は1,600時間)です。

【出典】支給要領0504・0506・0510/詳細版パンフレット p.38

7-2. 所定労働時間外の扱い

賃金助成:訓練対象者の所定労働時間内において実施された訓練等のみ助成対象として取り扱う。所定労働時間外に実施した訓練等が含まれる場合、当該時間は本助成金の対象となる時間からは除く。ただし、所定休日を予め振り替えて実施した場合は、この限りではない。
経費助成:訓練等が所定労働時間内に行われたか否かに関わらず、助成対象とする。ただし、業務上の義務として労働時間中に実施されるものに限る。

一方で、賃金の支払い義務は所定労働時間外でも生じます。

職業訓練等の実施期間中、所定労働時間外及び休日に職業訓練等を行った場合は、時間外手当や休日手当などの割増賃金を含む賃金を適正に支払う必要があります。eラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等を実施する場合であっても、支給対象訓練は業務上義務付けられ、労働時間に該当するため、当該訓練中に賃金を支払うことが必要となります(育児休業中訓練の場合を除く)。

【出典】支給要領0508/詳細版パンフレット p.17

eラーニング・通信制は「賃金助成なし」だが「賃金支払い義務あり」です。 ここを取り違えると、賃金助成の不支給どころか労働基準法違反(第2章の欠格事由「労働関係法令の違反」)に直結します。

7-3. 外部研修と所定労働時間がズレる場合の正解

厚労省Q&A A3が、外部研修の開始・終了時間が自社の所定労働時間とズレる場合の扱いを示しています。

所定労働時間外に実施した時間は、賃金助成の対象外となるため、その部分は賃金助成の算定から除外します。ただし、労働契約書や就業規則等に所定労働時間の変更がありうることについて明確な記載があり、かつ訓練開始前に、労働条件通知書などで「訓練の期間中(△月△日〜△月△日)は就業時間を○時〜○時に変更する」などと具体的に記載し、受講する労働者に明示・周知されていれば、変更後の時間を所定労働時間として、助成対象時間を算定します。
なお、「業務の都合により始業・終業時間を変更する場合がある」などの包括的な記載があるだけでは、その訓練の期間中に変更されたのかどうかが確認できないため、通常示されている所定労働時間の範囲内が助成対象となります。

【出典】事業主向けQ&A(令和6年10月版)Q3/A3

ポイントは「訓練開始前に」「期間と時刻を具体的に」明示することです。 包括的な就業規則の記載だけでは足りません。訓練の日程が決まった時点で、労働条件通知書などに反映しておく必要があります。


8. 実際に起きた不正受給事案と、そこから生まれた新しい書類

8-1. 191事業所・約20億円の不正受給

第56回労働政策審議会人材開発分科会(令和8年2月24日)の参考資料が、実際に起きた大型不正事案を報告しています。

申請事業主(=訓練委託元企業)が訓練会社(=訓練委託先)から資金提供を受け、それを訓練経費の支払いの原資とすることにより、実質的に訓練経費の全額を負担していないにもかかわらず、国に支給申請を行い、不正に人開金を受給していたもの。当該訓練会社は不正のスキームを考案し、申請事業主に提案するなど、不正受給に関与していた。

  • 令和7年12月19日付で、30労働局にて不正受給認定・助成金返還命令・訓練会社名の公表
  • 不正受給認定した事業所数及び金額:191事業所、約20億円
  • 令和8年2月13日付で、期限までに全額返還しなかった申請事業主について15労働局にて公表。対象は42事業所・未返還額約5億円

【出典】第56回労働政策審議会人材開発分科会 参考資料2 https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001660535.pdf

8-2. この事案から生まれた再発防止策

①教育訓練機関等が申請事業主に対して不正受給をそそのかすような案内(労働局への虚偽報告の指示等)を行っている実態が確認されたことを踏まえ、支給申請時の提出資料に「教育訓練機関等から提供された資料一式」を追加し、不適切な営業行為が行われていないかを労働局において厳正に確認する。②不正受給防止リーフレットを改正し、不正受給につながるケースを例示。③不正受給防止マニュアルの整備等を行い、労働局での審査を厳格化。

この再発防止策が、実際の申請書類に反映されています。

書類内容適用
様式第28号 受講料等の価格設定に関する疎明書内容が同じなのに助成金を申請する場合のみ受講料が著しく高額に設定されている場合、差額分を経費としない場合があることへの対応令和8年5月14日以降、支給申請日にかかわらず提出必須(経費助成の申請がない場合を除く)
教育訓練機関等から提供された訓練費用の負担軽減に係る説明資料等計画届・支給申請の両方で提出。受講案内以外の「負担軽減に係る説明資料」を教育訓練機関等から提供された場合該当する場合
様式第1-1号 15欄・16欄事業外訓練の場合、教育訓練機関と訓練契約を締結することとなった経緯(営業を受けた/自ら検索した/その他)、負担軽減に係る提案や金銭の提供等の有無をチェック常に必須
様式第12号 支給申請承諾書(訓練実施者)訓練実施者が①連帯債務②機関名公表③5年間の不支給措置に同意事業外訓練で必須

パンフレットは次のように明確に注意を促しています。

助成金を活用して従業員に訓練を実質無料で受けさせることができるなどと謳い、本来受けることができない助成金・訓練の提案・勧誘を行う訓練機関やコンサルティング会社などが存在しているという情報が寄せられていますが、返金を受けることなどにより、実際に申請事業主が全て訓練経費を負担していない場合は、支給要件を満たしませんので、助成金を受給することはできません。

雇用関係助成金全般への注意喚起としても、次のように明記されています。

経営コンサルタントを名乗る事業者に指南されて虚偽の申請書等を提出した場合はもちろん、事業者に申請書作成・提出まですべてを任せ、その申請代理人が不正行為を行った場合でも、事業主に助成金が支給されれば、不正受給の責任を問われることがあります。

【出典】詳細版パンフレット p.10, 55

8-3. 不正受給のペナルティと公表制度

偽りその他不正行為により本来受けることのできない助成金の支給を受け、または受けようとした場合、助成金は不支給、または支給を取り消します。すでに受給している場合は、助成金の全部または一部の返還が必要です(年3%の延滞金および返還額の20%の違約金を加算)。申請代理人や訓練機関が不正受給に関与した場合や不正の事実を知っていて黙認した場合にも、返還の連帯債務が発生します。悪質な場合は企業名などが公表されることがあります。不正受給は、刑事告訴の対象となる場合があります。

【出典】詳細版パンフレット p.8

令和8年8月3日から、支給申請段階での公表ルールも変わりました。

  • 支給申請を行った事業主に不正が認められた場合、支給決定前であっても、自主申告をしていない場合は原則公表対象(不正受給に係る支給申請額の合計額が100万円未満で、事業主が関与していないことが明らかな場合を除く)
  • 「自主申告」=支給申請後、労働局長による実地調査・呼び出し調査・文書照会等(初回調査)を行うより前に、不正受給に該当することを申告すること
  • 自主申告し、受給金額・違約金・延滞金を速やかに返還した場合は、原則として事業主名は公表されない
  • ただし「特に重大または悪質」な場合は非公表の対象から除く。自主申告したにもかかわらず調査に協力しない場合は「特に重大または悪質」として扱われる

【出典】詳細版パンフレット p.9/支給要領1002


9. 変更届・補正のルール:期限を過ぎたら遡れない

9-1. 補正に応じないと不支給

  • 計画届:記入漏れ・添付書類不備があると、労働局長が相当の期間を定めて補正を求める。指定期間内に補正しない場合、訓練開始日の前日までに補正するよう書面等で求められ、それも過ぎると不支給
  • 支給申請:補正を求め、応じない場合は1ヶ月以内の補正を求められる。期限までに補正しないと同様に不支給

9-2. 訓練開始日を1ヶ月以上動かすと計画届の出し直しになる

日時・場所・講師・時間数などが変わった場合は、期限内に変更届を提出する必要があります。訓練開始日を1ヶ月以上後ろ倒しする変更は変更届では処理できず、計画届の出し直しになります。出し直すと「1ヶ月前まで」の期限が再び発生するため、年度末が近い時期の後ろ倒しは間に合わなくなる可能性があります。

9-3. 実施日時が流動的な訓練は「都度変更届不要」の申し出ができる

OFF-JTに係る実施日時および実施場所については、訓練の性質上、複数回にわたって変更となる場合や事業主または受講者の選択により任意に決定される場合(空き状況をみて予約を取って受講するもの等)には、計画提出時に労働局長にその旨を申し出た上で、支給申請書の提出までに変更届を提出することで、都度変更届の提出を不要とします。

【出典】詳細版パンフレット p.43

この申し出は計画届提出時にしかできません。 予約制の訓練を検討している場合は、計画届提出のタイミングで忘れずに申し出てください。

9-4. 書類は原則として差し替え不可

各助成メニューで求めている添付書類は、原本から転記および別途作成したものではなく、実際に事業場ごとに調製し記入しているもの、または原本を複写機を用いて複写したものを提出してください。原本から加工・転記したものや別途作成された書類と確認された場合はその書類は無効となります。不正受給を防止する観点から、一度提出された書類について、事業主の都合などによる差し替えや訂正を行うことはできませんので、慎重に確認した上で提出するようにしてください。

【出典】詳細版パンフレット p.8

労働局からの補正指示に応じる形の修正はできますが、自社の都合による差し替えはできません。


10. 労働局に事前相談すべき理由

厚労省自身が、繰り返し労働局への事前相談を促しています。

訓練の内容などによって、事案ごとに判断が必要となる場合があります。ご不明な点やご相談は、管轄の労働局またはハローワークへお問い合わせください。

事業展開等の内容、受講者の職務と訓練との関係性などを総合的に判断する必要があるため、計画届の提出前に、余裕を持って管轄の労働局またはハローワークにご相談ください。その際、事業内の教育訓練体系図などをお示しいただけると職務と訓練との関係性を判断する助けとなります。

「この訓練機関のこの訓練を受講すれば助成対象となる」と厚生労働省が認めた訓練はありません。個々のケースごとに助成の可否を判断します。

【出典】詳細版パンフレット p.10, 54/事業主向けQ&A Q1/A1・Q2/A2

理由は明快です。

  1. 可否判定は「総合判断」で、事前には確定しません。訓練費用を払い切ったあとで対象外と言われるリスクがあります
  2. 一度出した書類は差し替えられません。窓口で口頭確認してから出すほうが安全です
  3. 令和8年8月3日改正の経過措置の適用可否は契約日で決まるため、自社ケースがどちらか窓口で確認する価値があります
  4. 実施日時が流動的な訓練の「都度変更届不要」の申し出は、計画届提出時にしかできません

相談時に持参・確認すべきこと:

  • 訓練カリキュラムの現物(対象労働者の職務に直接関連する専門的な知識・技能として認められるか)
  • 様式第1-3号のドラフト(「具体的に記載」の水準に達しているか)
  • カリキュラムのうち実訓練時間数から除外すべき時間の洗い出し(除外後に10時間を超えるか)
  • eラーニングと通学制を組み合わせる場合の、それぞれの提出期限の起算日
  • 訓練期間中に所定労働時間を変更する予定がある場合の労働条件通知書の書き方
  • 経過措置(契約締結日・申込日が令和8年8月2日以前)が自社に適用されるか

11. よくある質問

計画届が受け付けられたら、助成金は必ずもらえますか

もらえるとは限りません。令和7年度以降、支給・不支給の審査は支給申請後に一括して行われる運用になっています。計画届の受付は記入漏れや添付書類の有無といった形式面のチェックにとどまります。

一度提出した書類に誤りがあった場合、差し替えられますか

事業主の都合による差し替えや訂正はできません。労働局からの補正指示に応じる形での修正のみ可能です。提出前に内容を十分に確認してください。

出勤簿や賃金台帳は訓練後にまとめて整備してもよいですか

おすすめしません。出勤簿・タイムカード・賃金台帳は法定帳簿として日々整備する必要があり、後から作成・転記したものは無効とされます。通常の労務管理の一環として、訓練期間中も継続して整備してください。

外部研修の時間が自社の所定労働時間とズレる場合、賃金助成はどうなりますか

所定労働時間外の部分は賃金助成の対象外です。ただし、訓練開始前に労働条件通知書等で「訓練期間中は就業時間を○時〜○時に変更する」と具体的に明示・周知していれば、変更後の時間を所定労働時間として算定できます。包括的な記載だけでは認められません。

訓練機関から「返金するので実質無料になる」と案内されました。使ってもよいですか

使わないでください。訓練機関等から経費の実質的な減額となる金銭を受け取った場合は、経費助成の対象外になります。事業主が全額を負担していないと判断されれば、支給要件そのものを満たしません。

訓練開始日を変更したい場合、どうすればよいですか

1ヶ月未満の変更は変更届で対応できます。1ヶ月以上の後ろ倒しは変更届では処理できず、計画届の出し直しになり、「1ヶ月前まで」の期限が再び発生します。

労働保険料を一部滞納していますが、申請できますか

支給申請をした年度の前年度より前の保険年度に未納があると、原則として支給対象外になります。ただし支給申請の翌日から2ヶ月以内に納入した場合は対象外になりません。早めに労働局へ確認することをおすすめします。

不正受給が発覚した場合、どうなりますか

助成金は不支給または支給決定取消となり、受給済みの場合は年3%の延滞金と返還額の20%の違約金を加えて返還が必要です。悪質な場合は企業名が公表され、刑事告訴の対象になることもあります。支給申請後、労働局の調査より前に自主申告すれば、公表を免れられる場合があります。


12. まとめ

  • 不支給の原因は、欠格事由・書類記録の不備・按分や時間数の計算ミスの3層構造で起きる
  • 計画届の受付と支給決定は別物。審査は支給申請後に一括して行われる
  • 出勤簿・賃金台帳・LMSログ・直筆署名など、後から揃えられない記録がある。訓練開始前に体制を決めておく
  • 令和8年2月に191事業所・約20億円の不正受給が発覚し、審査が厳格化された。様式第28号などの新しい書類はこの事案が背景にある
  • 提出した書類は事業主の都合では差し替えられない。出す前に労働局へ相談するのが最も確実な対策

自社のケースで何を準備すればよいかは、実例つきの資料でまとめています。
人材開発支援助成金 滑り込み活用ガイドをダウンロード

本記事は2026年9月5日時点の情報に基づいています。制度は年度途中でも改正される場合があります。最新の要件は厚生労働省のホームページ、または管轄の都道府県労働局でご確認ください。


出典

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