【2026年10月更新】第二創業・ベンチャー型事業承継とは|承継を機に約6割が事業を見直し、7割超が売上に寄与 承継前に検討した企業は8割超

事業を継いだ後継者が、家業の技術や顧客を使って新しい事業を始めることを、第二創業やベンチャー型事業承継と呼びます。2023年版中小企業白書によると、事業承継を機に事業の見直し(事業再構築)に取り組んだ企業は約6割でした。取り組んだ企業の7割超が、売上や付加価値の増加に寄与したと答えています。承継の前から検討していた企業では、売上の増加に寄与したと答えた割合が8割を超えていました。

この記事では、第二創業、ベンチャー型事業承継、アトツギベンチャーの違いを中小企業庁の資料の原文で整理し、承継を機に事業を見直した企業の成果と、家業の資源を使って新しい事業を始める手順を紹介します。

社内で新規事業を立ち上げる研修の費用と進め方は、資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て

この記事の結論

  1. 第二創業は、後継者が先代から事業を引き継いだときに、業態転換や新しい事業・分野に進むこと。ベンチャー型事業承継は、後継者が先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源を使って、新規事業、業態転換、新市場への参入に挑むこと
  2. 事業承継を機に事業を見直した企業は約6割(2023年版中小企業白書)
  3. 取り組んだ企業の7割超が、売上や付加価値の増加に寄与したと答えている。承継の前から検討した企業では、売上への寄与が8割を超える
  4. 始めるときは、自社の強みを書き出し、顧客や取引先の要望を集め、小さな成功を先代や社員に見せる
  5. 承継の前から、新しい事業をどうするかを考えておく

この記事の目次

  1. 第二創業とは:ベンチャー型事業承継・アトツギベンチャーとの違い
  2. 事業承継を機に、約6割の企業が事業を見直している
  3. 取り組んだ企業の7割超が、売上や付加価値に寄与したと答えている
  4. 承継の前から検討した企業ほど、売上に寄与したと答えている
  5. 第二創業のメリットとリスク
  6. 第二創業の始め方:4つの手順
  7. 承継前の準備期間に、新しい取引先を開拓しておく
  8. 後継者が挑戦できる場:アトツギ甲子園
  9. 他社の後継者と一緒に、新しい事業を立ち上げる
  10. Q&A

目次

第二創業とは:ベンチャー型事業承継・アトツギベンチャーとの違い

似た言葉がいくつかありますが、出どころが違います。

言葉意味出典
第二創業既に事業を営んでいる中小企業で、後継者が先代から事業を引き継いだ場合に、業態転換や新事業・新分野に進出すること中小企業庁「創業・第二創業促進補助金」2016年度の募集要項
ベンチャー型事業承継後継者候補が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をもとに、新規事業、業態転換、新市場参入など新たな領域に挑戦すること中小企業庁「事業承継ガイドライン」第3版(2022年3月)
アトツギベンチャー引き継いだ会社を存続させるために、さまざまなスタイルで成長させている経営者一般社団法人ベンチャー型事業承継
事業再構築新たな製品・商品・サービスを提供すること、または製造方法・提供方法を相当程度変更すること2023年版中小企業白書(この記事のデータで使う言葉)

第二創業の定義の「新事業」は、これまでの事業とは異なる事業(日本標準産業分類の細分類で別の事業)を行うことを指しています。2023年版中小企業白書は、事業承継そのものを「第二創業」と呼ぶ使い方もあると紹介しています。

中小企業庁の事業承継ガイドラインは、ベンチャー型事業承継について次のように書いています。

さらに、後継者候補が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をもとにリスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など新たな領域に挑戦することで永続的な経営をめざし社会に新たな価値を生み出す、「ベンチャー型事業承継」の取組の輪も広がりつつある。

提唱している一般社団法人ベンチャー型事業承継は、「ベンチャー」といっても株式の上場や事業の売却を目指すことだけではなく、後継者が地域に根を張り、小さな挑戦を重ねることも含むとしています。


事業承継を機に、約6割の企業が事業を見直している

2023年版中小企業白書は、帝国データバンクが2022年11〜12月に行った「中小企業の事業承継・M&Aに関する調査」の結果を載せています。対象は、従業員5名以上で、事業承継から5〜9年がたった中小企業1万5,000社で、3,551社が回答しました。

白書は、この調査から「約6割の企業が事業承継を機に事業再構築に取り組んでいる」と書いています。承継したときの経営者の年齢が若い企業ほど、事業再構築に取り組む傾向がありました。

取り組んだ理由で多いのは次の2つでした。

事業再構築に取り組んだ理由(上位2つ)割合
既存事業の将来性に対して危機感を抱いていたため54.4%
新しい主力事業を創出するため51.8%

今の事業の先行きへの不安と、次の柱をつくりたいという考えの両方が、承継のときの見直しにつながっています。


取り組んだ企業の7割超が、売上や付加価値に寄与したと答えている

事業再構築に取り組んだ企業に、その成果を聞いた結果は次のとおりです。

事業再構築が寄与したもの「大きく寄与した」「ある程度寄与した」の合計
売上高の増加7割超
付加価値額の増加7割超
従業員数の増加4割超

売上・付加価値・従業員数のほかの効果では、「取引先の増加」が5割以上で最も多く、「経営者としての知識・スキルの養成」も3割を超えていました。新しい事業に取り組むことが、後継者自身の経営の経験にもなっていることがわかります。

白書は、事業再構築に取り組んだ企業のほうが、承継時点から2021年までの売上高の年平均成長率が高い傾向にあるとも書いています。そのうえで、事業承継を機に事業再構築に取り組むことは「企業を成長させる機会になる可能性が考えられる」としています。寄与したかどうかは回答した企業の判断で、成長率の差も原因と結果を調べたものではありません。


承継の前から検討した企業ほど、売上に寄与したと答えている

同じ調査では、事業再構築を承継の前から検討していたか、承継の後に検討したかでも、成果を比べています。承継の前から検討していた企業では、売上高の増加に「大きく寄与した」「ある程度寄与した」の合計が8割を超え、承継の後に検討した企業より高くなっていました。白書は次のように書いています。

このことから事業再構築に取り組む上では、事業承継前の早期の段階から検討を進めておくことが重要だと示唆される。

中小企業庁の事業承継ガイドラインも、承継後の新しい取組について、次のように書いています。

これらの取組を実効的に行うためには、事業承継前に中長期目標を策定する過程で、事業承継後の取組についてもイメージを持っておくべきである。

社長に就いてから新しい事業を考え始めるのではなく、承継の準備期間のうちに考えておくということです。承継の準備に何年かかるかは、後継者を決めてから承継を終えるまでに「3年以上かかる」と答えた企業が51.9%でした(帝国データバンク、2021年8月)。

白書は、事業承継をした企業の承継後9年間の売上高の伸びも、同じ業種の平均と比べています。承継後2年目までは同じ業種の平均を下回り、3年目から少しずつ上回り、5年目からその傾向が強まっていました。

一方で、承継からの年数ごとに売上高の伸びの分布を見ると、年がたつほど分布が広がり、9年後には大きく伸びた企業と、伸びが大きく落ちた企業の両方が増えていました。白書は、承継後に成長している企業と成長していない企業で「二極化が進んでいる可能性が考えられる」と書いています。承継しただけで業績が伸びるわけではなく、承継のあとに何をするかで差が出るということです。


第二創業のメリットとリスク

メリット

  • 家業にある技術、設備、顧客、取引先、地域での信用を使って始められる
  • 取引先が増える。事業再構築に取り組んだ企業の5割以上が「取引先の増加」を効果に挙げている
  • 後継者が、自分で新しい事業を立ち上げた実績をつくれる。3割超の企業が「経営者としての知識・スキルの養成」を効果に挙げている

リスク

  • 人が足りない。事業再構築の課題として「人材の確保」を挙げた企業が5割を超え、「新たな技術・ノウハウの獲得」「新しい取組に関する情報収集」が続いている
  • 先代や社員から反発が出ることがある。先代からの反発が「少しあった」「あった」企業は合わせて約2割、従業員からの反発が「一部あった」「大半からあった」企業は合わせて約3割だった
  • 既存の事業の資金と人を、新しい事業に回すことになる

反発が全くなかった企業は、先代からで約8割、従業員からで約7割でした。


第二創業の始め方:4つの手順

2023年版中小企業白書のデータから、承継を機に新しい事業を始めるときの手順を4つにまとめます。

1. 自社の強みを書き出す

事業再構築を成功させるために行った取組では、売上に寄与した企業もしなかった企業も、「自社の強みの掘り下げ」が最も多くなっていました。家業にある技術、設備、顧客、取引先、地域での信用を書き出し、どれを新しい事業に使えるかを考えます。

中小企業庁のガイドラインは、青果店が新鮮な果物の仕入れルートを使ってカフェを併設する例を挙げています。今の事業で持っているものを、別の形で使う考え方です。

2. 顧客や取引先の要望を集める

売上に寄与した企業と寄与しなかった企業で差が大きかった取組の一つが、「顧客・取引先等からの要望・ニーズの収集」でした。新しい事業の案を決める前に、今の顧客や取引先に話を聞きます。ほかに差が大きかったのは「設備の購入・更新」と「必要な知識・スキルを持った従業員の採用」です。

3. 自分で決める

白書によると、事業再構築の意思決定を「主に後継者」が行っている企業のほうが、事業再構築に取り組む割合が高くなっていました。先代は、新しい事業の判断を後継者に任せます。

4. 先代と社員に、行動で示す

社員の理解を得るために行った取組で最も多かったのは、「現経営者自ら率先して行動する姿を見せた」で5割を超えていました。次いで、取組の意義を伝え続けること、小さな成功体験を見せることでした。説明するだけでなく、後継者自身が先に取り組み、小さな成果を見せます。

研修を使って後継者に新規事業を担当させる場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て


承継前の準備期間に、新しい取引先を開拓しておく

承継の前にしておくことも、白書のデータからわかります。事業再構築が売上に寄与した企業と寄与しなかった企業で、後継者が準備期間中にしたことを比べると、「営業を担当し、新規取引先を開拓した」と「自社の経営に携わり、経営に関する哲学や手法を学んだ」の差が大きくなっていました。

新しい取組が売上に寄与した企業ほど、後継者が承継の前に自分で新しい顧客を見つけ、経営に関わる経験をしていたということです。

2026年版中小企業白書は、帝国データバンクの2025年11〜12月の調査で、後継者の年代別に付加価値額の伸び(中央値)を比べています。後継者が50代以下の企業は18.5%、60代以上の企業は14.9%でした(創業者を除く)。後継者の年代が若い企業のほうが、付加価値額の伸びが大きくなっていました。


後継者が挑戦できる場:アトツギ甲子園

中小企業庁は、39歳以下で代表権を持つ前の後継予定者が、家業の経営資源を使った新規事業を発表するピッチイベント「アトツギ甲子園」を開いています。第7回のエントリー締切は2026年11月25日18時です。準備の進め方は次の記事にまとめています。

→ 第7回アトツギ甲子園に間に合わせる|11月25日までにやること


他社の後継者と一緒に、新しい事業を立ち上げる

承継の前に新しい事業を考えるとき、相談できる相手が先代や社内の人だけだと、今の事業の見方から離れにくくなります。他社の後継者や新規事業の担当者と一緒に進めれば、自社の強みを外から見てもらえます。

新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会
新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。

進め方は次の順番です。

  • アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
  • 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
  • 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
  • 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
  • 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す

複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。

進め方は、上の4つの手順と同じ順番です。顧客に話を聞き、試作品で小さく試し、事業計画にまとめて発表します。承継の前の後継者が受講すれば、白書が示した「承継前から検討する」と「準備期間中に新しい取引先を開拓する」を、約6カ月の中で経験できます。

→ 新価値創造プログラムについて詳しく見る

後継者に社長就任前に何を任せるかは、次の記事で整理しています。

→ 経済同友会の事業承継ガイドライン7箇条|後継者に「経営に近い経験」を積ませるため、社長就任前に何を任せるか

研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て


Q&A

第二創業とは何ですか

後継者が先代から事業を引き継いだときに、業態転換や新しい事業・分野に進むことです。中小企業庁の「創業・第二創業促進補助金」の募集要項は、「既に事業を営んでいる中小企業者又は特定非営利活動法人において後継者が先代から事業を引き継いだ場合に業態転換や新事業・新分野に進出するもの」と定義していました。

ベンチャー型事業承継とは何ですか

後継者が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をもとに、新規事業、業態転換、新市場への参入など新しい領域に挑戦することです。中小企業庁の事業承継ガイドライン第3版も、この取組が広がりつつあると書いています。

第二創業とベンチャー型事業承継の違いは何ですか

どちらも、後継者が承継を機に新しい事業に挑むことを指します。第二創業は中小企業庁の補助金の名前にも使われた言葉で、業態転換や新事業への進出を指します。ベンチャー型事業承継は、先代から受け継ぐ経営資源を使うことを強調した言葉で、提唱する一般社団法人は、株式の上場を目指すことだけでなく小さな挑戦を重ねることも含むとしています。

承継の前と後、どちらで新しい事業を考えればよいですか

承継の前から考えておくことを勧めます。2023年版中小企業白書では、事業再構築を承継の前から検討していた企業で、売上の増加に寄与したと答えた割合が8割を超え、承継の後に検討した企業より高くなっていました。

第二創業は何から始めればよいですか

自社の強みを書き出すことから始めます。白書では、事業再構築を成功させるために行った取組として「自社の強みの掘り下げ」が最も多くなっていました。そのうえで、顧客や取引先の要望を集め、新しい事業の案を決めます。

第二創業で反発は起きますか

起きることがあります。2023年版中小企業白書では、先代から反発があった企業が約2割、従業員から反発があった企業が約3割でした。社員の理解を得る取組として最も多かったのは、経営者自身が率先して行動する姿を見せることでした。


新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。

▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て

本記事は2026年10月17日時点の公開情報に基づいています。最新の内容は各出典でご確認ください。

[出典]
中小企業庁「2023年版 中小企業白書」第2部第2章第1節(第2-2-12図、第2-2-13図、第2-2-26図〜第2-2-39図)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/chusho/b2_2_1.html
中小企業庁「2026年版 中小企業白書」概要
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/chusho/gaiyou.pdf
中小企業庁「事業承継ガイドライン 第3版」2022年3月
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
中小企業庁「平成28年度 創業・第二創業促進補助金 募集要項」2016年
一般社団法人ベンチャー型事業承継「About」
https://take-over.jp/about
帝国データバンク「特別企画:事業承継に関する企業の意識調査(2021年8月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/64cln-p3c/
中小企業庁「第7回アトツギ甲子園 開催概要」
https://atotsugi-koshien.go.jp/about/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次