後継者育成研修の費用は、無料のものから100万円を超えるものまであります。東京都中小企業振興公社の事業承継塾は無料で、中小企業大学校東京校の経営後継者研修は10カ月・税込128万3,000円です。
金額に差があるのは、期間と回数、学び方が違うためです。夜に2時間の講座を5回受ける研修と、10カ月間ほぼ毎日通う研修では、後継者が仕事を離れる時間も、研修のあとに残るものも違います。この記事では、2026年10月に募集要項で確認した公的機関と民間の研修を、期間・回数・総額で並べ、自社の後継者に合う研修の選び方を整理します。
社内で新規事業を立ち上げる研修の費用と進め方は、資料にまとめています。
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この記事の結論
- 後継者育成研修は、何をして学ぶかで、座学型・選抜型・実践型に分けられる
- 費用は、東京都の事業承継塾のように無料のものから、中小企業大学校東京校の10カ月・税込128万3,000円まで幅がある。今回確認した商工会議所と中小企業団体中央会の後継者塾は、5,000円〜5万円
- 比べるときは、1回あたりの単価だけでなく、期間・回数・総額(税込か、交通費・宿泊費を含むか)で比べる
- 承継した経営者が「最も有効だった」と答えた後継者教育で多いのは、社内での技術の教育と経営の教育。社外の経験では、同業他社での勤務を最も有効と答えた割合が高い
- 選ぶ基準は、承継までの年数に合う期間か、自社の課題や事業を扱うか、社外の人と一緒に学ぶか、研修のあとに何が残るか
この記事の目次
- 後継者育成研修・経営者育成研修・次世代リーダー研修の違い
- 後継者育成研修は3タイプ:座学型・選抜型・実践型
- 後継者育成研修の費用と期間の一覧
- 公的機関の研修と民間の研修はどう違うか
- 先輩経営者が「最も有効だった」と答えた後継者教育
- 後継者育成研修の選び方:5つの基準
- 実践型の例:受講者が自社の新しい事業を立ち上げる研修
- Q&A
後継者育成研修・経営者育成研修・次世代リーダー研修の違い
後継者育成研修、経営者育成研修、次世代リーダー研修、経営幹部候補研修は、どれも次の経営を担う人を育てる研修です。公的機関が定めた共通の定義は無く、研修を開く機関や会社によって呼び方が違います。中小企業大学校の経営後継者研修も、対象を「中小企業の経営後継者候補又は経営幹部候補」としていて、後継者と幹部候補を分けていません。
この記事では、受ける人で次のように分けて考えます。
| 呼び方 | 主に受ける人 | 多い開催者 |
|---|---|---|
| 後継者育成研修・後継者塾 | 会社を継ぐ予定の人、継いで間もない経営者 | 中小企業大学校、商工会議所、自治体、民間の研修会社 |
| 経営者育成研修・経営塾 | 経営者、経営を担う予定の幹部 | 民間の研修会社、経済団体 |
| 次世代リーダー研修・幹部候補研修 | 会社が選んだ将来の幹部候補 | 民間の研修会社。大企業の選抜研修が多い |
中小企業で社員から次の社長を選ぶ場合は、後継者育成研修と幹部候補研修のどちらも候補になります。
後継者育成研修は3タイプ:座学型・選抜型・実践型
研修の名前ではなく、何をして学ぶかで分けると、次の3つになります。
| タイプ | 何をするか | 期間と回数の例 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| 座学型 | 講師の講義を聞き、財務や組織、事業承継の手続きなどの知識を学ぶ | 夜や半日の講座を5〜11回 | 承継の前に、経営の基礎知識をひととおり身につけたい |
| 選抜型(長期集合型) | 他社の後継者や幹部候補と一緒に、数カ月〜10カ月かけて講義と演習を受ける。自社の分析や論文に取り組むものもある | 数カ月〜10カ月 | 本業から離れる時間を取れ、他社の後継者と一緒に学ばせたい |
| 実践型 | 受講者が自社の課題や新しい事業に実際に取り組み、その結果を発表する | 数カ月 | 経営判断をする経験を、承継の前に積ませたい |
座学型は費用が安く、本業を続けながら受けられます。選抜型は期間が長く費用もかかりますが、他社の後継者と長く一緒に学べます。実践型は、研修の中で受講者自身が自社の仕事を進めるため、研修が終わったときに、取り組んだ事業や計画が会社に残ります。
後継者育成研修の費用と期間の一覧
2026年10月3日に、各機関の募集要項や公式ページで確認した研修です。民間の研修は名前を伏せています。
| 研修 | タイプ | 期間・回数 | 受講料(1人) | 定員・対象 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業大学校東京校「経営後継者研修」第47期 | 選抜型(長期通学) | 2026年10月1日〜2027年7月23日。10カ月・全195日(土日祝と年末年始を除く毎日が原則) | 128万3,000円(税込、教材費を含む。企業訪問の交通費・宿泊費は別) | 20名。中小企業の経営後継者候補または経営幹部候補 |
| 東京都中小企業振興公社「事業承継塾」(2026年度) | 座学型 | 3期に分けて開講(第Ⅲ期は2026年11月16日〜2027年3月2日) | 無料 | 15社。都内の中小企業で、すでに入社している後継者、または承継しておおむね10年以内の経営者 |
| 東京都中小企業振興公社「後継者イノベーションスクール」 | 座学型(事業の変革がテーマ) | 2026年10月28日〜2027年3月17日、全10回 | 無料 | 15社。10年以内に承継する予定ですでに入社している後継者、または承継して間もない人 |
| 郡山商工会議所「こおりやま次世代経営者塾」第8期 | 座学型(夜の連続講座) | 2025年12月3日〜2026年2月18日、毎週水曜の夜に全11回 | 会員3万円、非会員5万円(税込) | 12名。郡山市内で、承継した人、承継予定の人、役員候補 |
| 神奈川県中小企業団体中央会「後継者塾2026」 | 座学型 | 2026年10月14日〜12月10日、13時30分〜16時30分の全5回 | 会員5,000円、非会員1万円(税の記載なし) | 次の後継者、承継した経営者 |
| 民間の後継者向け公開講座(集合型) | 選抜型 | 会場ごとに日程を設定 | 106万1,500円(税込。教材費・食事代を含み、交通費・宿泊費は別) | 後継経営者と候補。同族かどうかは問わない |
中小企業大学校は、東京校のほかにも関西校などで同じ名前の長期コースを開いています。商工会議所や中小企業団体中央会の後継者塾は、地域ごとに開かれていて、内容と費用はそれぞれ違います。
総額だけを比べると、期間の違いが見えません。回数や日数で割ると、次のようになります(計算値)。
| 研修 | 計算 | 1回・1日あたり |
|---|---|---|
| 中小企業大学校東京校 | 128万3,000円 ÷ 195日 | 1日あたり約6,580円 |
| 郡山商工会議所(非会員) | 5万円 ÷ 11回 | 1回あたり約4,545円 |
| 神奈川県中小企業団体中央会(非会員) | 1万円 ÷ 5回 | 1回あたり2,000円 |
中小企業大学校は1日9時40分〜16時40分の講義で、商工会議所の講座は夜の2時間ほどです。1回の長さが違うため、単価だけでは比べられません。後継者が本業から離れる時間も合わせて見てください。
公的機関の研修と民間の研修はどう違うか
公的機関の研修は、受講料が安いか無料です。東京都の2つの講座は無料で、商工会議所や中小企業団体中央会の講座は数千円から数万円です。そのかわり、都内の中小企業に限る、すでに入社していることなど、受けられる人に条件があります。定員も12〜20名ほどです。
中小企業大学校の経営後継者研修は公的な研修ですが、10カ月間ほぼ毎日通う長期コースで、受講料は128万3,000円です。要項は「徹底した自社分析と実践」を掲げています。
今回確認した民間の集合型の公開講座は、会場ごとに日程が設定され、同族かどうかを問わず受けられます。受講料は106万1,500円(税込)で、中小企業大学校と同じくらいの金額でした。民間の研修の費用には、受講料のほかに交通費・宿泊費がかかるかどうかも確認してください。
先輩経営者が「最も有効だった」と答えた後継者教育
2019年版中小企業白書は、引退した経営者のうち、意識して後継者教育を行った人に、何を実施したか、どれが最も有効だったかを聞いています(みずほ情報総研の2018年12月の調査)。
| 後継者教育の内容 | 実施した(複数回答、1,096人) | 最も有効だった(1つ、910人) |
|---|---|---|
| 自社事業の技術・ノウハウを社内で教育 | 52.7% | 24.4% |
| 取引先に顔つなぎ | 48.6% | 12.7% |
| 経営について社内で教育 | 48.2% | 20.9% |
| 同業者の集まりへ参加 | 42.4% | 7.5% |
| 資格の取得を奨励 | 28.8% | 7.0% |
| 社外セミナー等へ参加 | 28.7% | 5.7% |
| 同業他社で勤務 | 20.3% | 11.5% |
| 商工会・商工会議所青年部へ参加 | 16.7% | 1.8% |
| 異業種の会社で勤務 | 9.3% | 3.7% |
| 自社事業の勉強をする学校 | 8.5% | 1.9% |
最も有効だったと答えた人が多いのは、社内での技術の教育(24.4%)と、社内での経営の教育(20.9%)でした。白書は、実施した人のうち最も有効だったと答えた割合が最も高いのは「同業他社で勤務を経験させた」だったとも書いています。社外セミナーへの参加は、実施した人は28.7%いましたが、最も有効だったと答えた人は5.7%でした。
この結果は、引退した経営者が振り返って答えたもので、承継後の業績との関係を調べたものではありません。それでも、講義を聞く研修だけでなく、社内の仕事や他社での仕事を通じて学ぶことを、多くの経営者が有効だったと考えていることがわかります。
産労総合研究所の「教育研修費用の実態調査」(2025年版)では、企業が力を入れる研修として「選抜型幹部候補者教育」を挙げた企業が19.0%でした。前回は15.7%です。これは重点として選んだ割合で、実施している割合ではありません。
後継者育成研修の選び方:5つの基準
1. 承継までの年数に合う期間か
帝国データバンクの2021年の調査では、後継者を決めてから承継を終えるまでに「3年以上かかる」と答えた企業が51.9%でした。承継まで1年しかない後継者に10カ月の長期コースを受けさせると、承継の準備に使える時間が少なくなります。承継まで3年以上あるなら、長期の研修も候補になります。
2. 自社の課題や事業を扱うか
講義で一般的な知識を学ぶ研修か、受講者が自社の分析や計画に取り組む研修かを確認します。白書の調査で、最も有効だったと答えた人が多いのは、社内の仕事を通じた教育でした。研修の中で自社のことを扱えば、研修で学んだことを社内の仕事にそのまま使えます。
3. 社外の人と一緒に学ぶか
同じ白書で、実施した人のうち最も有効と答えた割合が最も高いのは、同業他社での勤務でした。他社の後継者や幹部候補と一緒に学ぶ研修では、自社のやり方を外から見る機会ができます。
4. 研修のあとに何が残るか
研修が終わったときに、修了証だけが残るのか、自社の分析や事業の計画が残るのか、実際に始めた事業が残るのかを確認します。社長が後継者の研修の成果を確かめるときの材料にもなります。
5. 総額と、本業から離れる時間
受講料だけでなく、交通費・宿泊費、後継者が本業から離れる日数を合わせて見ます。10カ月間ほぼ毎日通う研修と、夜に月数回通う研修では、会社の負担がまったく違います。
研修を使って後継者候補に新規事業を担当させる場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て
実践型の例:受講者が自社の新しい事業を立ち上げる研修
承継の前に、後継者が自分で経営判断をする経験を積ませたい場合は、実践型の研修が合います。中小企業庁の事業承継ガイドラインも、経営企画など経営の中心になる仕事を担当させ、意思決定の機会を与えるよう書いています。経済同友会のガイドラインの内容と合わせて、次の記事で整理しています。
→ 経済同友会の事業承継ガイドライン7箇条|後継者に「経営に近い経験」を積ませるため、社長就任前に何を任せるか
新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。
進め方は次の順番です。
- アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
- 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
- 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
- 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
- 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す
複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。
上の5つの基準で見ると、期間は約6カ月・全10回で、本業を続けながら受けられます。扱うのは自社の新しい事業で、他社の受講者と一緒に学びます。研修が終わったときには、受講者が自分で立ち上げた事業かプロジェクトが会社に残ります。
社員から次の社長を選ぶ会社の準備については、次の記事で詳しく書いています。
→ 後継者不在率50.1%|次の社長を社内から出すために、就任前の数年で何をさせるか
研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て
Q&A
後継者育成研修の費用はいくらですか
研修によって大きく違います。2026年10月に確認した範囲では、東京都中小企業振興公社の事業承継塾が無料、商工会議所や中小企業団体中央会の後継者塾が5,000円〜5万円、民間の集合型の公開講座が106万1,500円(税込)、中小企業大学校東京校の経営後継者研修が10カ月で128万3,000円(税込)でした。
公的な後継者研修はありますか
あります。中小企業大学校の経営後継者研修、都道府県の中小企業振興公社や商工会議所、中小企業団体中央会の後継者塾などです。無料や数万円で受けられるものが多い一方、地域や入社済みであることなど、受けられる人に条件があります。
中小企業大学校の経営後継者研修はどんな研修ですか
東京校の第47期は、2026年10月1日から2027年7月23日までの10カ月で、土日祝と年末年始を除く毎日の通学が原則です。全195日、受講料は税込128万3,000円(教材費を含み、企業訪問の交通費・宿泊費は別)、定員は20名です。
次世代リーダー研修との違いは何ですか
次世代リーダー研修は、会社が選んだ将来の幹部候補を対象にした研修として使われることが多い言葉です。後継者育成研修は、会社を継ぐ予定の人を対象にします。公的な共通の定義は無く、中小企業大学校の経営後継者研修も後継者候補と幹部候補の両方を対象にしています。
後継者の研修期間はどれくらいが適切ですか
承継までの年数で考えます。後継者を決めてから承継を終えるまでに3年以上かかると答えた企業は51.9%でした。承継まで時間があれば長期の研修も選べます。承継が近い場合は、本業を続けながら受けられる研修のほうが、承継の準備と両立できます。
研修のほかに、どんな後継者教育が有効ですか
引退した経営者への調査では、最も有効だった後継者教育として、社内での技術の教育(24.4%)と社内での経営の教育(20.9%)を挙げた人が多くいました。実施した人のうち最も有効と答えた割合が最も高いのは、同業他社での勤務でした(2019年版中小企業白書)。
新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て
本記事は2026年10月3日時点の公開情報に基づいています。研修の日程と受講料は変わることがあります。最新の内容は各機関の募集要項でご確認ください。
[出典]
中小企業大学校東京校「第47期 経営後継者研修」
https://www.smrj.go.jp/institute/tokyo/training/sme/2026/TO266001.html
中小企業大学校「経営後継者研修 募集要項」
https://www.smrj.go.jp/institute/training/sme/succession/application/index.html
東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継塾」
https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/2606/0005.html
東京都中小企業振興公社「後継者イノベーションスクール」
https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/2610/0001.html
郡山商工会議所「こおりやま次世代経営者塾」
https://www.ko-cci.or.jp/service/consultation/koukeisha/
神奈川県中小企業団体中央会「後継者塾2026」
https://www.chuokai-kanagawa.or.jp/archives/15042
中小企業庁「2019年版 中小企業白書」第2部第1章(第2-1-14図)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/2019/html/b2_1_2_2.html
帝国データバンク「特別企画:事業承継に関する企業の意識調査(2021年8月)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/64cln-p3c/
産労総合研究所「教育研修費用の実態調査」2025年
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr2510.html
中小企業庁「事業承継ガイドライン 第3版」2022年3月
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf

