全国企業の後継者不在率が2025年に50.1%となり、7年連続で前年を下回りました。帝国データバンクが約27万社を対象に調べ、2025年11月21日に公表しています。
社長就任の経緯では内部昇格が36.1%となり、同族承継の32.3%を初めて上回りました。後継者候補に占める非同族も41.0%と、初めて4割を超えています。中小企業の事業承継は、後継者を外部に探す段階から、社内で育てる段階へ移りつつあります。自社の次の社長を社内から出すなら、就任までの数年でその人に何を任せるかを、会社が決めなければなりません。
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この記事の目次
- 7年連続の改善、なお2社に1社
- 逆転した二つの数字
- 国が挙げる最大の懸念は「後継者の経営能力」
- 国が勧める育て方は「新規事業を通じた実践的な学び」
- 承継の準備には3年以上かかる
- 就任前の数年で何をさせるか
- Q&A
7年連続の改善、なお2社に1社
不在率50.1%は前年から2.0ポイント低い水準です。2016年以降で最も高かった2017年と比べると16.4ポイント下がりました。改善は単年の振れではなく、7年続いています。
ただし水準そのものは高いままです。2社に1社は、いまも後継者が決まっていません。
| 区分 | 後継者不在率 |
|---|---|
| 大企業 | 24.9% |
| 中小企業 | 51.2% |
| 小規模企業 | 57.3% |
会社が小さいほど後継者がいません。
社長の年代別では、30代未満が83.2%と最も高く、50代が58.3%、80代以上は22.2%でした。就任したばかりの若い社長が次を決めていない例が多く、この層の高さは危険を示すものではありません。注視すべきは60代以降の層になります。
逆転した二つの数字
変化がはっきり出たのは、社長就任の経緯です。
| 就任の経緯 | 2025年(速報値) |
|---|---|
| 内部昇格 | 36.1% |
| 同族承継 | 32.3% |
| M&Aほか | 20.6% |
| 外部招聘 | 7.6% |
前年の2024年は同族承継が35.7%、内部昇格が35.0%で、その差は0.7ポイントでした。拮抗していた二つの数字が、2025年に入れ替わっています。
後継者候補がどんな立場の人かを見ても、変化が出ています。
| 後継者候補の属性 | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|
| 非同族 | 41.0% | +1.7ポイント |
| 子ども | 29.7% | 低下 |
| 親族 | 24.6% | 上昇 |
| 配偶者 | 4.7% | 低下 |
後継者候補の10人に4人が、創業家と血縁を持ちません。
業種別の不在率では、建設業が57.3%、自動車・自転車小売が62.3%、職別工事が61.3%と高くなりました。製造業は42.4%で低く、金融・保険は31.4%と中分類で最も低い水準です。都道府県では、最も低い三重県が33.9%で5年連続の最低、最も高い秋田県が73.7%で唯一70%を超えました。全国平均と自社を比べる場合は、業種と地域まで見る必要があります。
研修を使って社員に新規事業を担当させる場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
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国が挙げる最大の懸念は「後継者の経営能力」
中小企業庁は、事業承継において「後継者の経営能力」が、現経営者と後継者の双方にとって最大の課題であり懸念点だとしています。
同族承継では、この懸念があっても、創業家の子だから継ぐという理由で、社内はひとまず納得します。内部昇格にはその理由がありません。20年同じ職場で働いてきた同僚が、ある日から社長になります。経営能力があることを、本人が周囲に示す必要があります。
社長が交代した会社のうち、いまは内部昇格が最も多くなっています。血縁という理由を使えない承継が、いちばんよくある形になったということです。
国が勧める育て方は「新規事業を通じた実践的な学び」
では、経営能力はどう育てるのか。中小企業庁は後継者育成について、次のように書いています。
新規事業を通じた企業の戦略立案能力、後継者自身の発信力、実行力が重要
新規事業を経営の観点から思考するなど、実践的な学びを通した後継者育成が必要
同庁が主催する後継者向けのピッチイベント「アトツギ甲子園」も、この考え方で設計されています。39歳以下の後継予定者が、家業の経営資源を使った新規事業の構想を発表する場です。
国が勧める後継者育成は、講義で知識を身につけることが中心ではありません。新しい事業を一つ、経営者の立場で考えて、実際に始めてみることです。事業を始めるには、何をどう売るかを決め、社内や取引先に説明し、最後までやりきる必要があります。中小企業庁が挙げる戦略立案能力、発信力、実行力は、この三つにそのまま当たります。
内部昇格の後継者にとっては、この経験にもう一つ意味があります。自分で始めた事業の結果は、売上やコストの数字として社内の誰もが確かめられます。経営能力があることを、口で言うのではなく数字で見せられる数少ない機会です。
承継の準備には3年以上かかる
時間の問題もあります。
2025年版中小企業白書によると、事業承継に要する期間を3年以上と答えた割合は半数を超えました。10年以上と答えた割合も少なくありません。中小企業庁は、早期の準備が事業承継に不可欠だとしています。
同族承継では、後継者の候補は家族の中にいます。内部昇格では、社内から候補を選ぶところから始まります。候補を決めるのが遅れれば、準備に使える年数はその分だけ減ります。
就任前の数年で何をさせるか
ここまでの資料から、社内で後継者を育てる会社が取る手順は三つに整理できます。
- 候補を早く決める。 事業承継には3年以上かかる会社が半数を超えています。候補が決まらないうちは、何も任せられません
- 自社の課題を一つ担当させ、新規事業として立ち上げさせる。 中小企業庁が後継者育成で重視しているのは、新しい事業を経営者の立場で考え、実際に始めてみることです
- 結果を社内で報告させる。 発信力は、中小企業庁が挙げる三つの能力の一つです。立ち上げた事業の数字を、本人が社内に説明する場を設けます
新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。
進め方は次の順番です。
- アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
- 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
- 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
- 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
- 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す
複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。
中小企業庁が勧める「新しい事業を経営者の立場で考え、実際に始めてみること」を、この順番で一通り経験する形です。受講者は年齢や役職を問わず、新卒社員から幹部まで参加しています。後継者候補が受講すれば、社長になる前に、自分で立ち上げた事業とその結果を社内に示すことができます。
研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
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帝国データバンクの次回調査は2026年11月ごろに公表される見通しです。内部昇格と同族承継の差がさらに広がるかどうかは、次の調査で確かめられます。
Q&A
後継者不在率50.1%は改善していると見てよいですか
7年連続で下がっており、傾向としては改善しています。ただし2社に1社は後継者が決まっていません。自社と比べる場合は業種と都道府県まで見てください。建設業57.3%と製造業42.4%では15ポイント近い差があります。
内部昇格が同族承継を上回ったのは2025年が初めてですか
社長就任経緯の構成比で内部昇格が同族承継を上回ったのは、2025年速報値が初めてです。2024年実績は同族承継35.7%、内部昇格35.0%で、差は0.7ポイントでした。
事業承継の準備にはどのくらいかかりますか
2025年版中小企業白書では、3年以上と答えた割合が半数を超え、10年以上と答えた割合も少なくありませんでした。中小企業庁は早期の準備を不可欠としています。
子どもが継がないと決まった場合、まず何をすればよいですか
社内に候補がいるかを確認し、候補を決めてください。内部昇格では候補を選ぶところから始まるため、決めるのが遅れるほど準備に使える年数が減ります。
後継者の育成は、国はどのような方法を勧めていますか
中小企業庁は、新規事業を通じた戦略立案能力・発信力・実行力の育成を重視し、「新規事業を経営の観点から思考するなど、実践的な学びを通した後継者育成が必要」としています。同庁主催のアトツギ甲子園もこの考え方で運営されています。
次のデータはいつ出ますか
帝国データバンクの後継者不在率動向調査は例年11月に公表されます。2026年版も同時期の見込みで、本記事は公表後に更新します。
新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。
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本記事は2026年9月26日時点の公開情報に基づいています。最新の数値は各出典でご確認ください。
[出典]
帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」2025年11月21日公表
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
中小企業庁「アトツギ甲子園・後継者育成」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/atotsugi-koshien.html
中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第1部第1章第9節 事業承継
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_9.html

