研修を受けた働く人の96.0%が、その研修は「役に立った」と答えています。厚生労働省が2026年7月31日に公表した能力開発基本調査の結果です。ただ、役に立った中身を聞くと、正社員で最も多いのは「現在の仕事の幅が広がった」の50.1%で、「役職等の昇進・昇格につながった」は3.1%でした。受講者の感想だけでは、研修が会社に何をもたらしたかはわかりません。
研修の効果は、受講者の満足度、学んだことの理解、職場での行動、会社の業績という4つの段階で測るのが一般的です。新規事業の研修は、売上が出るまで年単位の時間がかかります。経済産業省は、新しい事業の成果は売上やROIではすぐには見えにくいとして、活動量などの途中の指標を置くよう示しています。研修の効果を何で測るかを、4つの段階と、研修中・終了時・終了後の3つの時点に分けて整理します。自社の研修の成果を社内に説明するときに、そのまま使える形にしています。
社内で新規事業を立ち上げる研修の費用と進め方は、資料にまとめています。
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この記事の目次
- 受講者の96.0%が「役に立った」、昇進につながったは正社員で3.1%
- 「効果があった」と思う企業は8割、測り方は別の問題
- 研修の効果は4つの段階で測る
- 新規事業の研修は、売上より先に「途中の指標」を測る
- 新規事業研修で測ること:4つの段階×3つの時点
- 測る前に決めておく3つのこと
- Q&A
受講者の96.0%が「役に立った」、昇進につながったは正社員で3.1%
能力開発基本調査は、常用労働者30人以上の事業所で働く人に、2024年度に受けたOFF-JT(仕事を離れて受ける研修)が役に立ったかを聞いています。役に立ったと答えた人は96.0%で、正社員も正社員以外も同じ水準でした。
役に立った中身(複数回答)は次のとおりです。
| 役に立った中身 | 正社員 | 正社員以外 |
|---|---|---|
| 現在の仕事の幅が広がった | 50.1% | 47.0% |
| 仕事に対するモチベーションが向上した | 38.8% | 34.1% |
| 現在の仕事の課題が解決できた | 32.9% | 38.3% |
| 仕事に対する自信がついた | 24.6% | 29.1% |
| 社内外のネットワークやコミュニティが広がった | 18.3% | 9.0% |
| 社内での評価が高まった | 3.7% | 2.7% |
| 賃金(賞与・給与)の引上げにつながった | 3.5% | 5.0% |
| 役職等の昇進・昇格につながった | 3.1% | 1.4% |
| 希望する部署・担当への異動・配置転換につながった | 1.1% | 0.1% |
「仕事の幅が広がった」「モチベーションが上がった」は半数前後ですが、評価、賃金、昇進、異動につながったと答えた人は、いずれも5%以下です。
この数字は受講者本人の答えで、会社が測ったものではありません。一方、同じ調査で、社員の能力開発の成果を評価して処遇に反映している事業所は72.8%ありました。反映している事業所のうち、正社員の昇進・昇格に反映しているのは52.6%です。会社は能力開発の成果を処遇に反映する仕組みを持っていても、研修を受けた本人は、昇進まで結びついたとはほとんど感じていません。
「効果があった」と思う企業は8割、測り方は別の問題
労働政策研究・研修機構が2025年11月19日に公表した企業調査では、OFF-JTを実施した企業の22.6%が「効果があった」、61.3%が「ある程度効果があった」と答え、あわせて83.9%でした。従業員5人以上の企業に聞いた調査で、この割合はOFF-JTを実施した1,932社の中の数字です。
ただし、この調査は何で効果を確かめたかを聞いていません。満足度のアンケートなのか、行動の変化なのか、業績なのかは、この数字からはわかりません。
効果を測れているかを聞いた調査は、民間のものに限られます。研修の検討や実施に携わる人事・経営関連の150人に聞いた2024年3月の調査(コーチング会社の自社調査)では、管理職研修を実施している106人のうち、効果測定を「十分に実施できている」は40.6%、「実施しているが改善の余地がある」は50.9%、「実施していない」は8.5%でした。研修を運営するうえでの課題で最も多かったのは「効果測定の難しさ」の50.0%です。
人事メディアのHR総研が2020年に行った調査では、中堅社員研修の効果測定の方法は「受講時アンケート」が60%で最も多く、効果測定の指標を特に設定していない企業が61%でした。従業員300人以下の企業では、指標を設定していない割合が89%に上ります。
「効果があったと思う」と「効果を測れている」は、別の質問です。効果があったと思っていても、それを示す数字を持っていない会社が多いと考えられます。
研修の効果は4つの段階で測る
研修の効果を測る枠組みとして広く使われているのが、アメリカの研究者ドナルド・カークパトリックが示した4段階のモデルです。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の資料は、4つの段階を次のように説明しています。
| 段階 | 測るもの | 測り方の例 |
|---|---|---|
| レベル1 反応 | 研修満足度 | 受講直後のアンケート |
| レベル2 学習 | 学習到達度 | 筆記試験やレポート |
| レベル3 行動 | 行動変容度 | 受講者へのインタビューや、上司・同僚など他者による評価 |
| レベル4 成果 | 受講者や職場の業績の向上度合い | 業績の数字 |
段階が上がるほど、測るのに時間と手間がかかります。研修会社のリクルートマネジメントソリューションズが2016年に従業員500人以上の企業の人材開発担当の管理職415人に聞いた調査では、「すべて」または「多くの」研修で確認している割合は、満足度が61.6%、学習到達度が53.9%、職場での行動変化が45.5%、成果創出が44.1%でした。大企業でも、行動と成果まで確認している会社は半数を下回っていました。
同じ機構の別の資料は、効果を測る理由として、カークパトリックの挙げた5つを引いています。研修を続けるかやめるかを判定するため、目的に合っているかを判定するため、どう改善できるかを知るため、研修の予算を正当化するため、研修が必要であることを証明するため、です。効果測定は、研修の良し悪しを採点するためだけでなく、次の予算を決めるための材料にもなります。
研修を使って社員に新規事業を担当させる場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
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新規事業の研修は、売上より先に「途中の指標」を測る
新規事業の研修は、レベル4の成果を売上で測ろうとすると、研修が終わっても数字が出ません。経済産業省は2019年10月の「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」で、新しい価値をつくる活動について次のように書いています。
価値創造活動の成果は、既存事業の評価基準(売上、顧客数、ROI、市場シェアなど)ではすぐに成果が見えにくいことを理解し、価値創造戦略に基づいた成功の予兆を見える化できる指標(挑戦に係る活動量、失敗からの学びと活かし方など)を設け、評価する。
同じ指針は、既存事業と同じ基準で案件を評価すると、不確実性の高い案件が外されてしまうことを課題に挙げ、案件を段階ごとに評価する「ステージゲート」の仕組みを設けるよう示しています。
新規事業そのものが成果を出すまでの道のりも長いものです。コンサルティング会社のPwCが2025年11月に公開した調査では、売上高10億円以上で新規事業に取り組む企業のうち、投資を回収できた案件を1件でも持つ企業は2割程度、目標とする主力事業にまで育った企業は1割に満たない結果でした。同じ調査は、多くの企業が3年以内の中期の目標を測っていると書いています。
研修が終わった時点で、新規事業の売上はまだ出ていないのが普通です。研修の効果は、売上の前の段階で何ができるようになったかで測ることになります。
新規事業研修で測ること:4つの段階×3つの時点
新規事業の研修で測るものを、4つの段階と3つの時点で並べると次のようになります。
| 時点 | 段階 | 測るもの(例) | 誰が確かめるか |
|---|---|---|---|
| 研修中 | 反応・学習 | 毎回の満足度、課題の提出 | 人事 |
| 研修中 | 行動 | 想定する顧客に話を聞いた件数、試作品をつくったか | 上司 |
| 終了時 | 学習・行動 | 事業計画を発表したか、計画の中身 | 経営者 |
| 終了時 | 成果の手前 | その計画を社内で続けて検討するかを決めたか | 経営者 |
| 終了後(3カ月・6カ月・1年) | 行動 | 事業の検討がどこまで進んだか、受講者が自分で判断した仕事が増えたか | 上司・経営者 |
| 終了後(1年以降) | 成果 | 最初の顧客がついたか、売上が立ったか、受講者に任せる仕事や役職を変えたか | 経営者 |
研修中の項目は、顧客に話を聞いた件数のように、数えられるものにします。経済産業省の指針がいう「挑戦に係る活動量」にあたります。終了後の項目は、研修会社ではなく会社が決めることです。研修を始める前に「終了時に経営会議で事業計画を聞き、続けるかを決める」と決めておくと、研修のあとに何を確かめるかがはっきりします。
能力開発基本調査で、研修が昇進につながったと答えた正社員は3.1%でした。研修の効果を受講者の仕事に結びつけるには、終了後に受講者に何を任せるか、役職や担当をどう変えるかまで、会社が決めておく必要があります。候補者に何を任せるかは、次世代リーダー育成で成果が出る会社の6割、短期業績より挑戦機会を優先でも取り上げています。
測る前に決めておく3つのこと
1. 何をもって成果とするか
研修の目的と、測るものをそろえます。「新しい事業を一つ立ち上げる経験を積ませる」が目的なら、満足度のアンケートだけでは目的に合った測り方になりません。人材育成の会社が2024年に人事・経営者322人に聞いた調査では、研修の成果が出ていないと答えた企業の理由で最も多かったのは「効果測定指標が明確になっていない」の59%でした(研修会社の調査で、企業規模の内訳は公表されていません)。
2. 誰が、いつ確かめるか
研修中は人事と上司、終了時と終了後は経営者が確かめる、というように、時点ごとに担当を決めます。終了後の確認日は、研修を始める前に予定に入れておきます。
3. 結果を何に使うか
続けるか、やめるか、内容を変えるかを決める材料にします。受講者に任せる仕事や処遇を決める材料にもします。測った結果を使う場面が決まっていないと、効果測定は手間だけが残ります。
新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。
進め方は次の順番です。
- アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
- 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
- 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
- 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
- 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す
複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。
この進め方の一つひとつが、研修中と終了時に測る項目になります。顧客に話を聞いた件数、試作品、収益の見込み、最終回の事業計画、実際の顧客の獲得です。売上が出る前の段階で、受講者が何をしたかを数えて確かめることができます。
研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
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Q&A
研修の効果測定とは何ですか
研修が受講者と会社に何をもたらしたかを確かめることです。受講者の満足度、学んだことの理解、職場での行動の変化、会社の業績の4つの段階で測るカークパトリックのモデルが広く使われています。
研修の効果測定の方法には何がありますか
満足度は受講直後のアンケート、理解は筆記試験やレポート、行動は本人へのインタビューや上司・同僚による評価、成果は業績の数字で測るのが一般的です。段階が上がるほど、測るのに時間と手間がかかります。
研修の効果を測っている企業はどのくらいありますか
全国の企業に効果測定の実施率を聞いた最新の公的統計はありません。2024年の民間調査では、管理職研修を実施している106人のうち、効果測定を十分に実施できているのは40.6%でした。2020年のHR総研の調査では、中堅社員研修で効果測定の指標を設定していない企業が61%、従業員300人以下では89%でした。
研修は役に立っていますか
厚生労働省の能力開発基本調査(2026年7月31日公表)では、2024年度に受けたOFF-JTが役に立ったと答えた人は96.0%でした。ただし、昇進・昇格につながったと答えた正社員は3.1%でした。
新規事業の研修は、何で成果を測ればよいですか
売上が出るまで時間がかかるため、途中の指標を測ります。研修中は顧客に話を聞いた件数や試作品、終了時は事業計画の発表と続けるかの判断、終了後は3カ月後、6カ月後、1年後の検討の進み具合を確かめます。経済産業省も、新しい事業の成果は売上やROIではすぐには見えにくいとして、活動量などの指標を置くよう示しています。
新規事業はどのくらいの割合で成功しますか
PwCが2025年11月に公開した調査では、売上高10億円以上で新規事業に取り組む企業のうち、投資を回収できた案件を1件でも持つ企業は2割程度でした。パーソル総合研究所の2022年の調査では、新規事業の担当者の30.6%が「成功している」と答えています。成功の定義が違うため、二つの数字は同じものとして比べられません。
新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て
本記事は2026年10月12日時点の公開情報に基づいています。最新の数値は各出典でご確認ください。
[出典]
厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」2026年7月31日公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-07b.pdf
労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.257 人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」2025年11月19日公表
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/257.html
ZaPASS JAPAN「管理職研修に関するアンケート」2024年4月16日公表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000061567.html
HR総研「人材育成に関するアンケート調査(階層別研修)」2020年10月5日公表
https://hr-souken.jp/research/2610/
リクルートマネジメントソリューションズ「研修効果検証に関する実態調査」2016年10月3日公開
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000517/
アチーブメントHRソリューションズ「研修の実施効果に関する実態」(HRプロ掲載)
https://www.hrpro.co.jp/download_detail.php?ccd=01248&pno=18
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 基盤整備センター「研修評価と効果測定の一般的な考え方と進め方」
https://www.tetras.uitec.jeed.go.jp/files/kankoubutu/a-114-07.pdf
https://www.tetras.uitec.jeed.go.jp/files/kankoubutu/a-114-08.pdf
経済産業省「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」2019年10月4日
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kodoshishin/pdf/20191004003-1.pdf
PwCコンサルティング「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025」2025年11月12日公開
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/new-business-development-survey-2025.html
パーソル総合研究所「企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査」2022年5月23日公表
https://rc.persol-group.co.jp/news/202205231000/

