能力開発や人材育成に何らかの問題があると答えた事業所は80.1%で、前回の調査から0.2ポイント上がりました。厚生労働省が2026年7月31日に公表した「令和7年度能力開発基本調査」の結果です。問題点で最も多かったのは「指導する人材が不足している」の59.5%でした。
育成の計画を立てて職場で教える「計画的なOJT」を正社員に実施した事業所は60.6%で、前回より0.5ポイント下がっています。育成の計画を法律に沿って作っている企業は14.6%にとどまり、79.8%はどの事業所でも作っていません。人材育成の問題を減らすには、まず誰に何をいつ教えるかを計画に書くところから始める必要があります。
社内で新規事業を立ち上げる研修の費用と進め方は、資料にまとめています。
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この記事の目次
- 人材育成に問題がある事業所は80.1%
- 計画的なOJTは正社員60.6%、正社員以外25.1%に低下
- 研修費を出す企業は減り、1人当たりの額は増えた
- 育成計画を作っている企業は14.6%
- 育成計画は何から書くか
- 手引きが挙げる「新規事業の起業」という育成の理由
- Q&A
人材育成に問題がある事業所は80.1%
能力開発基本調査は、厚生労働省が2001年度から毎年行っている調査です。今回は2025年10月1日時点の状況を、企業7,452社、事業所7,194カ所、労働者20,127人に聞きました。有効回答率は企業52.6%、事業所54.2%、個人43.9%です。対象は常用労働者30人以上の企業と事業所で、30人未満の会社は入っていません。
人材育成に何らかの問題があると答えた事業所は80.1%でした。問題点を複数回答で聞いた結果は次のとおりです。
| 人材育成の問題点(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 指導する人材が不足している | 59.5% |
| 人材を育成しても辞めてしまう | 51.6% |
| 人材育成を行う時間がない | 45.5% |
| 鍛えがいのある人材が集まらない | 27.5% |
| 育成を行うための金銭的余裕がない | 14.3% |
| 人材育成の方法がわからない | 10.0% |
| 適切な教育訓練機関がない | 9.5% |
| その他 | 8.7% |
| 技術革新や業務変更が頻繁なため、人材育成が無駄になる | 1.5% |
上位3つは、教える人がいない、育てても辞める、育てる時間がない、です。「育成の方法がわからない」は10.0%にとどまりました。多くの事業所は、何を教えればよいかはわかっていて、教える人と時間が足りていない状態です。
問題点ごとの前回との差や、企業規模別の割合は公表されていません。
計画的なOJTは正社員60.6%、正社員以外25.1%に低下
計画的なOJTとは、職場で仕事をしながら教える方法のうち、計画書をつくって教育担当者、対象者、期間、内容を決め、段階を追って続けるものを指します。仕事を離れて受ける研修は、OFF-JTと呼ばれます。
| 実施した事業所の割合 | 今回 | 前回 | 差 |
|---|---|---|---|
| 計画的なOJT(正社員) | 60.6% | 61.1% | 0.5ポイント低下 |
| 計画的なOJT(正社員以外) | 25.1% | 27.1% | 2.0ポイント低下 |
| OFF-JT(正社員) | 70.9% | 71.6% | 0.7ポイント低下 |
| OFF-JT(正社員以外) | 30.7% | 31.2% | 0.5ポイント低下 |
四つとも前回より下がりました。
事業所の規模で見ると、差はさらに大きくなります。
| 事業所の規模 | 計画的なOJT(正社員) | OFF-JT(正社員) |
|---|---|---|
| 30〜49人 | 44.4% | 53.0% |
| 50〜99人 | 51.3% | 65.5% |
| 100〜299人 | 70.4% | 79.6% |
| 300〜999人 | 69.8% | 85.2% |
| 1,000人以上 | 78.4% | 85.4% |
30〜49人の事業所では、正社員に計画的なOJTを実施しているのは44.4%で、半数を下回ります。1,000人以上の78.4%とは34ポイントの差があります。
30人未満の会社はこの調査に含まれていません。労働政策研究・研修機構が従業員5人以上の企業に行った別の調査では、2023年度にOFF-JTを実施した企業は、従業員9人以下で16.2%でした。調査の対象も年度も違うため、直接は比べられませんが、会社が小さいほど研修を実施していない傾向は共通しています。
社員に新規事業を担当させる研修を検討する場合の、費用と進め方はこちらの資料で確認できます。
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研修費を出す企業は減り、1人当たりの額は増えた
OFF-JTや自己啓発の支援に費用を出した企業は54.4%で、前回より0.5ポイント下がりました。一方、費用を出した企業の、労働者1人当たりのOFF-JT費用は2.0万円で、前回の1.5万円から0.5万円増えています。自己啓発の支援費用は1人当たり0.4万円で、前回と同じでした。
費用の数字は2024年度1年間の実績で、OJTの実施率は2025年10月時点の状況です。時点がずれているため、研修費が増えたことと、計画的なOJTが減ったことを、そのまま結びつけることはできません。
正社員向けのOFF-JT費用を過去3年でどう変えたかを聞くと、増やした企業が24.6%、減らした企業が6.9%、実績がない企業が48.4%でした。今後3年については、増やす予定の企業が34.3%、実施しない予定の企業が41.0%です。研修にお金をかける企業とかけない企業に、はっきり分かれています。
育成計画を作っている企業は14.6%
事業内職業能力開発計画とは、職業能力開発促進法第11条にもとづき、会社が社員の能力を段階的・体系的に伸ばすために作る計画です。作るかどうかは会社の判断に任されています。
| 事業内職業能力開発計画の作成状況 | 企業の割合 |
|---|---|
| すべての事業所で作成している | 14.6% |
| 一部の事業所で作成している | 5.6% |
| どの事業所でも作成していない | 79.8% |
すべての事業所で作成している企業の割合を規模別に見ると、30〜49人で12.0%、50〜99人で11.4%、100〜299人で19.3%、300〜999人で24.3%、1,000人以上で29.9%でした。1,000人以上の企業でも、3割未満です。
計画づくりの担当者である「職業能力開発推進者」も、82.2%の企業がどの事業所でも選任していません。
一方で、人材育成に関する基本的な方針を策定した事業所は37.3%で、今後策定したいと答えた事業所も36.6%ありました。社員のキャリアづくりのために今後取り組みたいことの中で、最も多い回答です。
なお、この調査は、計画を作っている企業と作っていない企業で、OJTの実施率や人材育成の問題がどう違うかは示していません。
育成計画は何から書くか
厚生労働省は、事業内職業能力開発計画の作成の手引きと、様式の例を公開しています。現在の案内ページでは、計画の柱を三つに分けています。
- 計画の基本方針。経営理念と経営方針、そこから決める人材育成の方針と目標
- 配置と雇用管理。社員のキャリアに合わせた配置の方針と、その具体的な内容
- 職務ごとに必要な能力。職務の内容と、必要な能力の中身と水準
様式は3枚です。1枚目に人材育成の方針と目標、2枚目に昇進・昇格と人事考課、3枚目に職務に必要な能力を書きます。3枚目には「教育訓練体系図」を添えます。
教育訓練体系図とは、会社が行う研修や教育を一枚の図にまとめたものです。同省が以前に出した手引きでは、次の四つの切り口で研修を整理するよう示しています。
- 何のために(到達目標)
- 誰に対して(対象者)
- 何を(研修の名前)
- どのように(方法)
図は、縦に社員の階層や水準を、横に職務や教育の内容を並べます。この図をもとに年間の教育訓練計画を立てます。
人材育成の問題で最も多かった「指導する人材が不足している」も、この作業で中身がわかります。計画的なOJTは、もともと教育担当者を決めて行うものです。体系図と計画を書くと、教える人が決まっていない職務や階層が、表の空欄として出てきます。空欄のうち、社内で教えられる人がいない分野は、外部の研修で補う候補になります。
手引きが挙げる「新規事業の起業」という育成の理由
同じ手引きは、会社が教育訓練を必要とする理由の例として、経営戦略の側から「新規事業の起業」を挙げています。そのうえで、新規事業では「これまでの事業分野にはない能力が求められる」と書いています。
これまでの事業にない能力は、社内に教えられる人がいない分野でもあります。教育訓練体系図の中に「新規事業の立ち上げ」の研修を置き、対象者と到達目標を決めておくと、外部の研修を使う理由を計画の上で説明できます。
新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。
進め方は次の順番です。
- アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
- 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
- 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
- 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
- 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す
複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。
教育訓練体系図に当てはめると、「何のために」は新規事業の立ち上げ、「誰に対して」は将来の事業を任せたい社員、「何を」は新規事業の立ち上げの研修、「どのように」は約6カ月で実際に事業を立ち上げる形、と書くことができます。社内に教える人がいない分野を、計画の中で外部の研修に割り当てる例です。
研修の費用の組み方と、始めるまでの手順は資料にまとめています。
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Q&A
令和7年度能力開発基本調査はいつ公表されましたか
厚生労働省が2026年7月31日に公表しました。2025年10月1日時点の状況を、常用労働者30人以上の企業・事業所と、そこで働く労働者に聞いた調査です。
人材育成の問題で最も多いのは何ですか
「指導する人材が不足している」で59.5%でした。続いて「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%です。人材育成に何らかの問題があると答えた事業所は80.1%でした。
計画的なOJTとは何ですか
職場で仕事をしながら教える方法のうち、計画書をつくって教育担当者、対象者、期間、内容を決め、段階を追って続けるものです。正社員に実施した事業所は60.6%で、前回の61.1%から下がりました。
事業内職業能力開発計画を作っている企業はどのくらいありますか
すべての事業所で作成している企業は14.6%、一部の事業所で作成している企業は5.6%で、79.8%はどの事業所でも作成していません。
教育訓練体系図とは何ですか
会社が行う研修や教育を一枚の図にまとめたものです。厚生労働省の手引きは、何のために、誰に対して、何を、どのように、の四つの切り口で研修を整理し、縦に社員の階層、横に職務や教育の内容を並べる形を示しています。
従業員30人未満の会社のデータはありますか
能力開発基本調査は30人未満を対象にしていません。労働政策研究・研修機構の別の調査では、2023年度にOFF-JTを実施した企業は、従業員9人以下で16.2%、10〜29人で30.4%でした。
新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。
▼ 【2026年8月改正対応】新規事業研修で使えるリスキリング助成金の全て
本記事は2026年9月26日時点の公開情報に基づいています。最新の数値は各出典でご確認ください。
[出典]
厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」2026年7月31日公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf
労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.257 人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」2025年11月19日公表
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/257.html
厚生労働省「事業内職業能力開発計画」作成のご案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/jigyounaikaihatukeikaku_2.html
厚生労働省「『事業内職業能力開発計画』作成の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/0000199757.pdf

