【2026年10月更新】研修予算の決め方|5つの算出方法を計算例で比べる。決算月から逆算した決める時期と、経営計画が無い会社の手順

研修予算は、「いくらにするか」「いつ決めるか」「何に配分するか」の3つを決めます。ところが、年間の研修計画と中長期の人材育成の方針をともに定めている企業は22.8%でした。東京商工会議所が2023年に、同所の研修を利用した企業628社に聞いた調査です。従業員300人未満の企業では、どちらも定めていない企業がいずれの規模でも2割以上ありました。

一方で、研修費を増やす方向の企業は多くなっています。産労総合研究所の2025年の調査では、今後1〜3年で教育研修費用を増やす方向の企業が57.7%でした。この記事では、研修予算の5つの算出方法を計算例で比べ、決算月から逆算して決める時期と、計画が無い会社でもできる決め方を整理します。

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この記事の結論

  1. 研修予算の算出方法は、1人あたり×人数、人件費に対する割合、売上に対する割合、前年比、必要な研修の積み上げの5つ。中小企業は、積み上げで出した金額を、1人あたり×人数の金額と比べて確かめる
  2. 来期の研修予算は、期が始まる3〜4カ月前から前年の振り返りを始め、期首の1カ月前までに経営者の承認を取る。3月決算の会社なら12月から始めて2月に決める
  3. 3月決算の会社は全体の19.0%(2017年度)。決算月は会社ごとに違うので、時期は自社の決算月から逆算する
  4. 年間研修計画や経営計画が無い会社は、経営者が来期いちばん力を入れることを1つ決め、そこから研修を選ぶ
  5. 予算は、全員が順番に受ける「階層別の枠」と、将来の幹部や新しい事業を担う人を選ぶ「選抜の枠」に分けて組む

この記事の目次

  1. 研修予算を決める前に確かめる3つのこと
  2. 研修予算の5つの算出方法と計算例
  3. 研修予算はいつ決めるか:決算月から逆算する
  4. 研修予算の決め方の手順
  5. 年間研修計画や経営計画が無い会社の決め方
  6. 研修予算の配分:「階層別の枠」と「選抜の枠」に分ける
  7. 経営者に研修予算を承認してもらうには
  8. 来期は研修予算を増やす企業が多い
  9. 選抜の枠に入れる研修の例
  10. Q&A

目次

研修予算を決める前に確かめる3つのこと

研修予算の金額を決める前に、次の3つを確かめます。

1. 前年度にいくら使ったか

予算ではなく、実際に使った金額を確かめます。外部研修の受講料だけでなく、講師への謝礼、会場費、教材費、研修に参加した社員の交通費・宿泊費も含めて数えます。何を研修費に数えるかは、比べる調査とそろえる必要があります。

社員1人あたりの研修費の目安は、産労総合研究所の調査で年3万6,036円(2024年度、正規従業員1人あたり)、中小企業に限ると3万1,788円でした。

2. 来期の経営目標は何か

売上や利益の目標、新しく始める事業、増やす人員など、来期に会社が何をするかを確かめます。研修予算は、この目標のために社員に何ができるようになってほしいかから決めます。

3. 社員数がどう変わるか

新入社員や中途採用で何人増えるか、管理職に上がる人が何人いるかを確かめます。人数が変われば、必要な研修も金額も変わります。

厚生労働省の「能力開発基本調査」(2025年度、2026年7月公表)では、人材育成の基本的な方針を策定済みの企業は37.3%でした。方針の決め方は「企業主体で決定」が64.4%です。研修予算も、会社が経営目標から決めるものです。


研修予算の5つの算出方法と計算例

研修予算の金額を出す方法は、次の5つです。どの方法を使っている企業が多いかを示す、無料で公開された調査は見当たりません。計算例の金額は、説明のための例です。

算出方法計算のしかた計算例(社員30人の会社)向いている会社
1人あたり×人数1人あたりの金額 × 社員数3万1,788円 × 30人 = 95万3,640円初めて予算を組む会社。他社の平均と比べたい会社
人件費に対する割合年間の人件費 × 決めた割合人件費1億2,000万円 × 1% = 120万円人件費の増減に合わせて研修費も変えたい会社
売上に対する割合年間の売上 × 決めた割合売上5億円 × 0.2% = 100万円業績に合わせて研修費を決めたい会社
前年比前年度の実績 × (1+増やす割合)前年度実績80万円 × 1.1 = 88万円毎年同じ研修を続けている会社
積み上げ必要な研修ごとの費用を足す新入社員研修5万円×3人+管理職研修10万円×2人+選抜研修50万円×1人 = 85万円来期にやる研修が決まっている会社

1人あたり×人数の計算例は、産労総合研究所の中小企業の平均(3万1,788円)を使いました。人件費比、売上比、前年比の割合は、説明のための例です。目安にする割合を示した公的な調査はありません。

参考までに、厚生労働省の「就労条件総合調査」(2021年調査)では、企業が負担した教育訓練費は常用労働者1人1か月平均670円でした。従業員30〜99人の企業では424円です。労働費用総額(1人1か月40万8,140円)に対する割合を計算すると、約0.16%になります(670円 ÷ 40万8,140円)。この調査は数え方も対象年も産労総合研究所の調査と違うため、二つの金額を並べて比べることはできません。

5つのうち、来期に何をするかから金額を出すのは積み上げだけです。ほかの4つは、研修の中身と関係なく金額が決まります。

中小企業では、まず積み上げで来期に必要な研修と金額を出し、その金額を1人あたり×人数の金額と比べるのが確かめやすい方法です。社員30人の会社で積み上げた金額が85万円なら、中小企業の平均で計算した95万3,640円とほぼ同じ水準です。大きく下回る場合は、必要な研修が抜けていないかを見直します。


研修予算はいつ決めるか:決算月から逆算する

研修予算は、期が始まる前に決めておかなければ、期首からの研修を申し込めません。国税庁の「会社標本調査」(2017年度分)によると、年1回決算の会社のうち3月決算は19.0%で、9月決算は10.8%、12月決算は10.2%でした(決算期別の普通法人数から計算)。3月決算の会社は2割ほどで、決算月は会社によってばらばらです。研修予算を決める時期は、自社の決算月から逆算します。

何をするか3月決算9月決算12月決算
今期の研修の振り返り(実績と効果)12月6月9月
来期の経営目標の確認、必要な研修の洗い出し1月7月10月
研修会社や講座の見積を取り、金額を出す1月7月10月
経営者の承認2月8月11月
研修の申し込み、日程の確保3月9月12月

この時期は、期首の3〜4カ月前から始める場合の目安です。外部の研修には、定員が12〜20名ほどの講座もあります。期首すぐに始まる研修を使う場合は、募集要項で締切を確かめ、さらに早く申し込みます。


研修予算の決め方の手順

研修予算は、次の7つの手順で決めます。

1. 今期の研修を振り返る

予定した研修のうち、実施できたものとできなかったもの、予算と実際に使った金額の差を確かめます。実施できなかった研修は、その理由も書き出します。

2. 来期の経営目標を確かめる

経営者に、来期に会社として何をするかを確かめます。新しい事業、新しい顧客、新しい設備など、社員に新しくできるようになってほしいことを聞き出します。

3. 必要な研修を書き出す

全員が順番に受ける研修(新入社員、中堅社員、管理職など)と、経営目標のために必要な研修を書き出します。

4. 金額を出す

研修ごとの費用を積み上げ、1人あたり×人数の金額と比べます。

5. 枠に分けて配分する

研修を「階層別の枠」と「選抜の枠」に分けて、それぞれの金額を決めます(次の節)。

6. 経営者の承認を取る

研修ごとに、何のために、誰が、いつ受けるかと、金額を示して承認を取ります(後の節)。

7. 期の途中で見直す

期の半ばで、予算と実績の差を確かめます。使わなかった予算を、選抜の枠の研修に回せるかも検討します。


年間研修計画や経営計画が無い会社の決め方

2020年版小規模企業白書によると、経営計画や事業計画を策定している小規模事業者は5割を下回り、中規模企業では約7割でした。策定していない理由は「策定する必要性を感じていない」「策定する人員やノウハウがない」が、それぞれ3割を超えています。

東京商工会議所の2023年の調査でも、研修を実施するうえでの課題として、「方針や計画が無く、体系的に行われていない」を挙げた企業が24.5%ありました。

研修・人材育成の課題(東京商工会議所、2023年、628社、複数回答)割合
時間的余裕がない(業務多忙等)44.4%
担当する人材が不足38.1%
ノウハウが不足34.4%
方針や計画が無く、体系的に行われていない24.5%
対象となる社員の意欲が低い23.2%
管理職等の育成能力や指導意識が不足21.8%
資金が不足8.1%
経営層の理解が低い5.4%
特に課題はない12.4%

資金の不足を挙げた企業は8.1%で、時間や人の不足、方針や計画が無いことを挙げた企業のほうが多くなっています。研修予算を決める前に、何のための研修かを決めることが先だということです。

経営計画も研修計画も無い会社は、次の3つだけ決めれば、研修予算を組めます。

  1. 経営者が、来期いちばん力を入れることを1つ決める(例:新しい事業を1つ始める、新しい地域の顧客を増やす)
  2. そのために、誰に何ができるようになってほしいかを決める
  3. その人が受ける研修を1つ選び、費用を出す

これに、新入社員研修など毎年必要な研修の費用を足せば、来期の研修予算になります。


研修予算の配分:「階層別の枠」と「選抜の枠」に分ける

研修予算は、二つの枠に分けて組みます。

  • 階層別の枠:新入社員、中堅社員、管理職など、全員が順番に受ける研修
  • 選抜の枠:将来の幹部や後継者の候補、新しい事業を担う人を選び、経営に近い経験を積ませる研修

二つに分けるのは、階層別の研修だけで予算を使い切ると、次の経営を担う人にいくら使っているかが見えなくなるためです。産労総合研究所の2025年の調査で、企業が力を入れる研修として「選抜型幹部候補者教育」を挙げた企業は19.0%でした。これは重点として選んだ割合で、予算の19.0%を充てているという意味ではありません。選抜の枠に予算の何割を充てるのが一般的かを示す公表データは無いため、対象にする人数と、その人に何を経験させたいかから金額を決めます。

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経営者に研修予算を承認してもらうには

東京商工会議所の調査では、研修・教育訓練が重要だと答えた企業は97.1%でした(とても重要63.2%、まあまあ重要33.9%)。一方で、対象者1人あたりの研修予算を今後2〜3年で増やしたい企業は46.0%、増減なしが46.5%で、ほぼ半々です。重要だと考えていても、予算を増やすとは限りません。

経営者に承認してもらうには、研修ごとに次の4つを示します。

  • 何のための研修か(来期の経営目標のどれに関係するか)
  • 誰が、いつ受けるか
  • いくらかかるか(受講料、交通費・宿泊費、受講中に本業から離れる時間)
  • 研修のあとに何で成果を確かめるか

成果の確かめ方には、研修の評価の枠組みとして知られるカークパトリックの4段階が使えます。

段階何を確かめるか確かめ方の例
1. 反応受講者がどう感じたか受講後のアンケート
2. 学習知識や技能が身についたかテスト、課題の提出
3. 行動職場での行動が変わったか上司の確認、研修後の仕事の内容
4. 結果事業の数字に表れたか売上、顧客数、新しく始めた事業

階層別の研修は1〜2段階目で確かめることが多くなります。選抜の枠の研修は、3〜4段階目で何を確かめるかを、承認を取るときに経営者と決めておきます。


来期は研修予算を増やす企業が多い

産労総合研究所の2025年の調査(159社)では、今後1〜3年の教育研修費用について、次のように答えています。

今後1〜3年の教育研修費用割合
かなり増加9.6%
やや増加48.1%
現状維持35.3%
やや減少6.4%

増やす方向の企業は合わせて57.7%でした。前の2回の調査では59.5%、62.8%です。回答した企業は毎回違うため、この差から増やす企業が減っているとは言えません。

厚生労働省の「能力開発基本調査」(2025年度)では、正社員のOFF-JT(職場を離れて行う研修)の費用を、今後3年間で増加させる予定の企業は34.3%でした。調査の対象も聞き方も産労総合研究所とは違うため、二つの割合を比べることはできません。


選抜の枠に入れる研修の例

選抜の枠には、将来の幹部や後継者の候補に、経営に近い経験を積ませる研修を入れます。来期の経営目標に新しい事業がある会社なら、その事業を担当する社員に、事業を立ち上げる研修を受けさせる方法があります。

新価値創造プログラムという方法

新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会
新価値創造プログラム 第三期生の最終成果報告会

新価値創造プログラムは、受講者が自社の新規事業または社内プロジェクトを実際に立ち上げる研修です。全10回・約6カ月のあいだに、受講者は一人一つ、必ず事業かプロジェクトを立ち上げます。

進め方は次の順番です。

  • アイデアを「誰に、何を提供するか」まで言葉にする
  • 想定する顧客に話を聞き、本当の課題を見つける
  • 競合と比べて、自社が提供する価値の違いをはっきりさせる
  • 試作品をつくり、収益の見込みを立てる
  • 最終回で事業計画を発表し、実際の顧客の獲得を目指す

複数の会社の社員が一緒に受講するため、自社の外の人から意見をもらいながら進めます。具体的な新規事業のアイデアがない段階からでも参加でき、最初の2回はアイデアを出すところから始めます。

研修予算の中では選抜の枠に入る研修で、研修費の数え方では外部の教育機関への研修委託費にあたります。成果は、カークパトリックの4段階のうち、受講者が立ち上げた事業やプロジェクトとして、3〜4段階目で確かめられます。

→ 新価値創造プログラムについて詳しく見る

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Q&A

研修予算はどうやって決めればよいですか

1人あたり×人数、人件費に対する割合、売上に対する割合、前年比、必要な研修の積み上げの5つの方法があります。中小企業では、来期に必要な研修の費用を積み上げ、その金額を1人あたり×人数の金額と比べて確かめる方法が使いやすくなります。

研修予算はいつ決めればよいですか

期が始まる3〜4カ月前から今期の振り返りを始め、期首の1カ月前までに経営者の承認を取るのが目安です。3月決算の会社なら、12月に振り返りを始め、2月に承認を取ります。決算月は会社ごとに違うため、自社の決算月から逆算してください。

中小企業の研修予算の目安はいくらですか

産労総合研究所の2025年の調査では、2024年度の中小企業の研修費は正規従業員1人あたり年3万1,788円でした。社員30人なら年95万3,640円です。何を研修費に数えるかによって金額は変わるため、比べるときは数え方をそろえてください。

研修予算の配分はどうすればよいですか

全員が順番に受ける「階層別の枠」と、将来の幹部や新しい事業を担う人を選ぶ「選抜の枠」に分けて組みます。選抜の枠に何割を充てるのが一般的かを示す公表データは無いため、対象にする人数と、その人に何を経験させたいかから金額を決めます。

研修計画が無い会社はどうすればよいですか

経営者が来期いちばん力を入れることを1つ決め、そのために誰に何ができるようになってほしいかを決めて、その人が受ける研修を1つ選びます。これに毎年必要な研修の費用を足せば、来期の研修予算になります。

経営者に研修予算をどう説明すればよいですか

研修ごとに、何のための研修か、誰がいつ受けるか、いくらかかるか、研修のあとに何で成果を確かめるかの4つを示します。成果の確かめ方は、カークパトリックの4段階(反応、学習、行動、結果)を使って決めておきます。


新規事業を社内で立ち上げる研修の費用と進め方は、次の資料にまとめています。

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本記事は2026年10月3日時点の公開情報に基づいています。最新の内容は各出典でご確認ください。

[出典]
東京商工会議所「研修・教育訓練、人材育成に関するアンケート」2023年11月24日
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1201617
産労総合研究所「2025年度 教育研修費用の実態調査」2025年10月8日
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr2510.html
厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」2026年7月31日
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
厚生労働省「令和3年 就労条件総合調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaikyou.pdf
中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」第3部第2章第1節
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b3_2_1.html
国税庁「平成29年度分 会社標本調査」決算期別の普通法人数
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin2017/pdf/04_hojinsu.pdf
Donald L. Kirkpatrick, Evaluating Training Programs

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